ドイツ騎士団総長

ドイツ騎士団総長（ホーフマイスター）

ドイツ騎士団における総長（ドイツ語: Hochmeister、ラテン語: Magister generalis）は、騎士団の最高位の指導者であり、ドイツ騎士団国の国家元首でした。他の騎士修道会におけるグランドマスター（総長）に相当しますが、ドイツ騎士団では「ホーフマイスター」という名称が用いられます。初期の正式名称は「アレマン人のイェルサレムの聖マリア病院長」でしたが、後に「テュートン人のイェルサレムの祝福された処女マリアの病院長」と改称されました。

名称の変遷

1216年以降、「テュートン人のイェルサレムの祝福された処女マリアの病院長」という名称が用いられるようになりました。1525年には、ホーフマイスターとドイッチュマイスター（神聖ローマ帝国内の管轄地域の長）が統合され、総長の称号は「ホーフ・ウント・ドイッチュマイスター」となりました。ドイッチュマイスターは1219年に創設され、1494年以降は神聖ローマ帝国の公爵と同等とみなされていました。

紋章

総長の紋章は、黒い十字架の上に金色のクロス・フローリー（端がユリの形をした十字）と松葉杖十字（端がT字になっている十字）を組み合わせたものが載り、さらにその手前に皇帝の鷲が描かれています。金色のクロス・フローリーが黒十字に載る意匠は15世紀以降に広く用いられるようになりました。伝説によれば、1250年にフランス王ルイ9世がドイツ騎士団総長にイェルサレム十字の変型とフランスの象徴フルール・ド・リスの使用を認めたとされていますが、この物語は近世の文献にまでしか遡ることができません。しかし、13世紀半ばからこの紋章が用いられていたことは文献から示されています。

宗教改革以前の総長選出と権力

ドイツ騎士団における総長交代時の権力移行は、他の中世国家と比べて効率的でした。前総長が死去すると、副総長が騎士団の指揮官たちによる総会を召集し、12人の選挙人団を選出します。彼らが多数決で総長を決定しますが、少数派の候補者とその支持者も多数派への支持を表明し、形式的に全会一致とされました。総長候補は、騎士団の幹部経験者から血統ではなく能力によって選ばれましたが、騎士団の勢力が衰退すると有力家系から選出されることもありました。

13世紀にプロイセンを征服し、本部をマリエンブルクに移して以降、総長はドイツ騎士団国の国家元首として強大な権力を持つようになりました。プロイセンの統治権と軍事権を掌握し、総会で行政措置を通すことができました。また、マリエンブルク城の城主を兼ね、騎士団の会計も握っていました。さらに、ハンザ同盟の一員として関税収入も得ていました。

歴代総長

初期の兄弟団指導者（1190年-1198年）

1190年: マイスター・ジブラント
1190年–1192年: コンラート
1192年: ゲルハルト
1193/94年: 小修道院長ハインリヒ
1195年–1196年: ウルリッヒ
1196年: ハインリヒ（おそらくハインリヒ・ヴァルポットと同一人物）

騎士団総長（1198年–1525年）

1. 1198年–1208年以前: ハインイヒ・ヴァルポット・フォン・バッセンハイム
2. 1208年の文献に記載: オットー・フォン・ケルペン
3. 1208年–1209年: ハインリヒ・フォン・トゥンナ
4. 1209年–1239年: ヘルマン・フォン・ザルツァ
5. 1239年–1240年: コンラート・フォン・テューリンゲン
6. 1240年–1244年: ゲルハルト・フォン・マルベルク
7. 1244年–1249年: ハインリヒ・フォン・ホーエンローエ
8. 1249年–1252年: グンター・フォン・ヴュラースレーベン
9. 1252年–1256年: ポッポ・フォン・オステルナ
10. 1256年–1273年: アンノ・フォン・ザンガーハウゼン
11. 1273年–1282年: ハルトマン・フォン・ヘルトルンゲン
12. 1282年/1283年 –1290年: ブルハルト・フォン・シュヴァンデン
13. 1290年–1297年: コンラート・ヴォン・フォイヒトヴァンゲン
14. 1297年–1303年: ゴットフリート・フォン・ホーエンローエ
15. 1303年–1311年: ジークフリート・フォン・フォイヒトヴァンゲン
16. 1311年–1324年: カール・フォン・トリーア
17. 1324年–1330年: ヴェルナー・フォン・オルセルン
18. 1331年–1335年: ロタール・フォン・ブラウンシュヴァイク
19. 1335年–1341年: ディートリヒ・フォン・アルテンブルク
20. 1342年–1345年: ルドルフ・ケーニッヒ・フォン・ヴァッツァウ
21. 1345年–1351年: ハインリヒ・デューゼマー・フォン・アルフベルク
22. 1351年–1382年: ヴィンリッヒ・フォン・クニプローデ
23. 1382年–1390年: コンラート・ツェルナー・フォン・ローテンシュタイン
24. 1391年–1393年: コンラート・フォン・ヴァーレンローデ
25. 1393年–1407年: コンラート・フォン・ユンギンゲン
26. 1407年–1410年: ウルリッヒ・フォン・ユンギンゲン
27. 1410年–1413年: ハインリヒ・フォン・プラウエン
28. 1414年–1422年: ミヒャエル・キュヒマイスター・フォン・シュテルンベルク
29. 1422年–1441年: パウル・フォン・ルスドルフ
30. 1441年–1449年: コンラート・フォン・エリックスハウゼン
31. 1449/1450年–1467年: ルートヴィヒ・フォン・エルリックスハウゼン
32. 1467年–1470年: ハインリヒ・ロイス・フォン・プラウエン
33. 1470年–1477年: ハインリヒ・レフレ・フォン・リヒテンベルク
34. 1477年–1489年: マルティン・トゥルフゼス・フォン・ヴェッツハウゼン
35. 1489年–1497年: ヨハン・フォン・ティーフェン
36. 1497年–1510年: フリードリヒ・フォン・ザクセン
37. 1510年–1525年: アルブレヒト・フォン・ブランデンブルク＝アンスバッハ

宗教改革後の変遷

最後のホーフマイスターであるアルブレヒト・フォン・ブランデンブルク＝アンスバッハは、ルター派に改宗し、1525年にドイツ騎士団国を廃止してプロイセン公国を創設しました。騎士修道会としてのドイツ騎士団は存続しましたが、神聖ローマ帝国内の管轄地域はドイッチュマイスターが統治していました。1527年にドイッチュマイスターであったヴァルター・フォン・クローンベルクがホーフマイスターにも任じられ、両役職が統合されました。

本部もフランケンのメルゲントハイムに移転し、ホーフ・ウント・ドイッチュマイスターは神聖ローマ帝国の公と同等とされました。1806年にヴュルテンベルク王国がメルゲントハイムを併合したため、騎士団の本部はウィーンに移転しました。1923年にオイゲン・フォン・エスターライヒが総長を辞任して以降、ホーフ・ウント・ドイッチュマイスターの二重称号は廃止されました。

ホーフ・ウント・ドイッチュマイスター（1527年-1929年）

1. 1527年–1543年: ヴァルター・フォン・クローンベルク
2. 1543年–1566年: ヴォルフガング・シューツバー
3. 1566年–1572年: ゲオルク・フント・フォン・ヴェンクハイム
4. 1572年–1590年: ハインリヒ・フォン・ボーベンハウゼン
5. 1590年–1618年: マクシミリアン・フォン・エスターライヒ
6. 1619年–1624年: カール・フォン・エスターライヒ
7. 1625年–1627年: ヨハン・オイスタッハ・フォン・ヴェスターナッハ
8. 1627年–1641年: ヨハン・カスパー・フォン・シュタディオン
9. 1641年–1662年: レオポルト・ヴィルヘルム・フォン・エスターライヒ
10. 1662年–1664年: カール・ヨーゼフ・フォン・エスターライヒ
11. 1664年–1684年: ヨハン・カスパー・フォン・アンプリンゲン
12. 1685年–1694年: ルートヴィヒ・アントン・フォン・プファルツ＝ノイブルク
13. 1694年–1732年: フランツ・ルートヴィヒ・フォン・デア・プファルツ
14. 1732年–1761年: クレメンス・アウグスト・フォン・バイエルン
15. 1761年–1780年: カール・アレクサンダー・フォン・ロートリンゲン
16. 1780年–1801年: マクシミリアン・フランツ・フォン・エスターライヒ
17. 1801年–1804年: カール・フォン・エスターライヒ＝テシェン
18. 1804年–1835年: アントン・ヴィクトール・フォン・エスターライヒ
19. 1835年–1863年: マクシミリアン・ヨーゼフ・フォン・エスターライヒ＝エステ
20. 1863年–1894年: ヴィルヘルム・フォン・エスターライヒ
21. 1894年–1923年: オイゲン・フォン・エスターライヒ
22. 1923年–1929年: ノルベルト・クライン

1929年以降

1929年、ドイツ騎士団はローマ・カトリックの修道会に回帰しました。

1929年–1933年: ノルベルト・クライン
1933年–1936年: パウル・ハイダー
1936年–1948年: ロベルト・シェルツキー
1948年–1970年: マリアン・トゥムラー
1970年–1988年: イルデフォンス・パウラー
1988年–2000年: アルノルト・オトマー・ヴィーラント
2000年–2018年: ブルーノ・プラッター
2018年-現在: フランク・バヤール


ドイツ騎士団総長の歴史は、中世ヨーロッパの権力闘争や宗教改革、近代における世俗化といった歴史の変遷を反映しています。総長の役割は、宗教的な指導者から国家元首、そして現代の修道会指導者へと変化し、その権威と影響力は時代とともに大きく変動してきました。

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