レオポルト・ヴィルヘルム・フォン・エスターライヒ

レオポルト・ヴィルヘルム・フォン・エスターライヒ（1614年1月5日 - 1662年11月20日）は、オーストリアの貴族であり、軍人としても活躍した人物です。神聖ローマ皇帝フェルディナント2世とマリア・アンナ・フォン・バイエルンの間に生まれた末子で、皇帝フェルディナント3世の弟にあたります。彼はドイツ騎士団の総長やスペイン領ネーデルラントの総督も務めました。

生涯

レオポルト・ヴィルヘルムは、父親の意向により、若くして高位聖職者としての道を歩み始めます。1625年にはパッサウ司教、1626年にはシュトラスブルク司教に任命されるなど、次々と重要な地位を獲得しました。さらに1627年にはハルバーシュタット司教、1631年にはマクデブルク大司教、そして1635年にはブレーメン大司教にも任命されました。しかし、これらの地域はプロテスタントが優勢で、カトリック教会の影響力が弱まっていたため、レオポルトはこれらの地位において実質的な権力を行使することはできませんでした。これらの司教領は1648年に世俗化されることになります。その後も、1637年にオルミュッツ司教、1656年にブレスラウ司教に就任するなど、多くの聖職禄を得ました。

1639年、レオポルトは兄である皇帝フェルディナント3世から、三十年戦争に対処するため皇帝軍の司令官に任命されます。しかし、軍事経験が乏しいレオポルトにとって、この任命は困難なものでした。1642年には、ブライテンフェルトの戦いでスウェーデンの将軍レンナート・トルステンソンに大敗を喫し、オーストリアは危機に瀕することになります。また、1641年からドイツ騎士団の総長を務めていましたが、1644年にはトルステンソン戦争でデンマーク救援に向かわせた軍勢が敗北した責任を取り、司令官を辞任しました。

1647年、レオポルトはスペイン領ネーデルラントの総督に就任し、フランス侵攻の準備を進めます。しかし翌1648年、フランス軍のコンデ公ルイ2世率いる軍勢とのランスの戦いで大敗を喫し、スペインからの支援が滞ったことが、結果的に兄の皇帝がドイツ諸侯と和解し、ヴェストファーレン条約締結へとつながる一因となりました。

ネーデルラント総督在任中は、フランスとの西仏戦争において、フランス軍と激戦を繰り広げました。彼は北フランスの要塞を次々と奪取し、ネーデルラント防衛とスペインへの支援に尽力しました。また、レオポルトは美術品の収集家としても知られ、ダフィット・テニールス、フランス・スナイデルス、ピーテル・スネイエルス、ダニエル・セーヘルス、ヤン・ファン・デン・ヘッケ、ジョン・マイケル・ライト、ヨハン・カスパール・ケルルなど、多くの芸術家のパトロンを務めました。彼の収集した美術品は、ブリュッセルの屋敷に保管され、後にオーストリアに遺贈されました。その一部はオルレアン・コレクションに収められたり、ウィーンの博物館に移管されました。

1656年、レオポルトは総督の地位をフアン・ホセ・デ・アウストリアに譲り、オーストリアへ帰国しました。1662年にウィーンで48歳で死去しました。彼が保持していた多くの聖職禄のうち、パッサウ、オルミュッツ、ブレスラウの司教職とドイツ騎士団総長の地位は甥のカール・ヨーゼフに引き継がれましたが、カール・ヨーゼフが1664年に夭折したため、これらの地位は他家に渡り、ハプスブルク家による保全は実現しませんでした。

参考文献

菊池良生『戦うハプスブルク家―近代の序章としての三十年戦争』講談社、1995年。
シセリー・ヴェロニカ・ウェッジウッド著、瀬原義生訳『ドイツ三十年戦争』刀水書房、2003年。

もう一度検索