ドイヤーズ・ストリート

ドイヤーズ・ストリート：血塗られた歴史と文化が交差するチャイナタウンの裏通り

ニューヨーク市マンハッタンのチャイナタウンにひっそりと佇むドイヤーズ・ストリート。全長わずか60メートルほどの短い通りですが、その歴史は血なまぐさく、そして多岐にわたる文化が交錯する、奥深い魅力に満ちています。

歴史：血塗られた角

ドイヤーズ・ストリートの名前は、18世紀にこの地に蒸留酒製造所を設立したオランダ移民のヘンドリック・ドイヤーに由来します。しかし、この通りが有名になったのは、20世紀初頭に中国系ギャングであるトング（堂）が抗争を繰り返した場所であったからです。通りの途中のカーブした角は「ザ・ブラディ・アングル（血塗られた角）」と呼ばれ、多くの血が流れました。抗争は1930年代まで続き、鉈が武器として使われたことから、「ハチェット・マン（鉈男）」という言葉も生まれました。

1905年には、劇場に400人が詰めかける中で銃撃事件が発生し、3人が死亡。1909年にも、安良堂のメンバーが対立する組織によって銃撃され、1人が死亡しました。これらの事件は、ドイヤーズ・ストリートが当時のチャイナタウンにおいて、いかに危険な場所であったかを物語っています。

文化：多様な歴史の痕跡

ドイヤーズ・ストリートには、1927年から営業を続ける老舗の茶室「南華茶室」や、ギフトショップ「ティングス・ギフト・ショップ」など、歴史ある店が数多く残っています。また、この通りは理容店や美容室が多いことでも知られています。

かつては中国語専門の劇場があり、1903年のキシナウのユダヤ人虐殺（ポグロム）の際には、中国系住民が犠牲者のための義援金集めを行いました。また、20世紀初頭には、タマニー・ホールの政治ボスであったチャック・コナーズが、現在の郵便局の場所に事務所を構え、作曲家アーヴィング・バーリンもこの場所で歌や演奏を披露していたと伝えられています。

現在：映画のロケ地としても人気

現在、ドイヤーズ・ストリートは、その独特な雰囲気から、映画やテレビドラマのロケーション撮影にもよく使われています。映画『16ブロック』や『彼が二度愛したS』などにも、この通りのシーンが登場します。

また、15-17番地には職業紹介所があり、様々な民族的背景を持つ移民に仕事を紹介しています。ドイヤーズ・ストリートは、過去の血なまぐさい歴史を乗り越え、多様な人々を受け入れる場所として、新たな役割を担っています。

ドイヤーズ・ストリートは、短い通りながら、チャイナタウンの歴史と文化を凝縮した、魅力的な場所です。その血塗られた過去と、多様な人々が共存する現在を訪れることで、ニューヨークの多面的な魅力を感じることができるでしょう。

もう一度検索