ドゥエイン・ギル

ドゥエイン・ギル：ギルバーグとして一世を風靡したパロディレスラー

ドゥエイン・ギル（Duane Gill、1959年7月10日 - ）は、アメリカ合衆国メリーランド州グレンバーニー出身のプロレスラーです。彼は、キャリアの全盛期にWWF（現WWE）で、当時WCWで絶大な人気を誇っていたビル・ゴールドバーグのパロディ・レスラー、ギルバーグ（Gillberg）として活動したことで知られています。また、WWFライトヘビー級王座も獲得しており、その王座保持期間は歴代5位の記録を誇ります。

インディー団体からWWFへ

1990年、ギルはアメリカのインディー団体で覆面レスラーとしてデビュー。ペイン（Pain）のリングネームで、同じくマスクマンのアゴニー（Agony）ことバリー・ハーディと共に、ローズ・オブ・ダークネス（The Lords of Darkness）を結成しました。1991年8月には、クリーム・チーム（デビッド・ディメクリオ&リップ・ソーヤー）を破り、ミッド・イースタン・レスリング・フェデレーション（Mid-Eastern Wrestling Federation）のタッグ王座であるMEWFタッグチーム王座の初代王者となっています。

1992年にはWWFのバトルロイヤルに参加し、その後も40人バトルロイヤルに出場。1993年になると、ローズ・オブ・ダークネスはエクスキューショナーズ（The Executioners）と名前を変え、WWFのタッグ戦線に登場するようになります。しかし、マンデー・ナイト・ロウなどの番組で他のタッグチームと対戦するものの、ジョバーとしての活動が多く、目立った活躍は見られませんでした。1994年初頭にタッグチームは解散し、4月にハーディーがWWFから離脱。ギルは本名で活動を始めますが、同年中にWWFを去っています。

ギルバーグの誕生とライトヘビー級王座

1998年のサバイバー・シリーズで、マンカインドの対戦相手としてWWFに復帰。その後は、アル・スノー、スコーピオ、ボブ・ホーリーらとJ.O.B Squadを結成し、コミカルな活動を展開しました。また、マーク・メロの引退試合の相手を務め、J.O.B Squadの介入を経て勝利を収めています。

同年11月17日のRAW is WARで、クリスチャンからWWFライトヘビー級王座を奪取。しかし、すぐに当時WWFの競争相手であったWCWのトップスター、ビル・ゴールドバーグを模倣したギミックに転換し、リングネームをギルバーグ（Gillberg）に改めました。ゴールドバーグが『最強の男』ギミックであったのに対し、ギルバーグは『最弱の男』ギミックという、真逆のキャラクターでした（当初はゴールドバーグが173連勝したことにちなみ、ギルバーグには173連敗させる予定でした）。

ギルバーグは、ゴールドバーグのあらゆる要素をパロディ化。入場シーンからバックステージでの振る舞い、そしてゴールドバーグ・チャントをもじったギルバーグ・チャントまで、徹底的に模倣しました。入場時の火花は手持ち花火、スモークは消火器で代用されるなど、チープな演出も特徴的でした。さらに、ゴールドバーグと同じようなタトゥーを右腕に入れ、ゴールドバーグの決め台詞である「Who's next?（次に俺に倒されるのは誰だ?）」を、「Who's First（最初に俺に倒されるのは誰だ?）」とアレンジするなど、細部にまでこだわりを見せました。

WWF離脱後

1999年のRoyal Rumbleに出場するも、エッジにすぐに排除されてしまいます。2月15日のゴールダストとの試合で、J.O.B Squadのメンバーであるブルー・ミーニーの介入を経て、WWFで初勝利を挙げました。しかし、ギルバーグはハウス・ショーやテレビ・ショーでタイトル防衛戦を行うことがなく、徐々に忘れ去られていきました。数ヶ月のオフの後、2000年2月のサンデー・ナイト・ヒートでエッセ・リオスと対戦し、敗北してタイトルを失いました。この試合が、ギルにとってWWF最後の試合となりました。

WWF離脱後も、インディー団体でギルバーグのギミックを継続。メリーランド・チャンピオンシップ・レスリング（Maryland Championship Wrestling）を主戦場に活動しました。

2003年にゴールドバーグがWWEと契約すると、ザ・ロックとの抗争を開始。4月にギルもWWEに復帰し、WWF離脱前のギルバーグのギミックで活動を再開しました。ロックとゴールドバーグの抗争中には、ゴールドバーグを攻撃するも返り討ちに遭い、その隙にロックが背後からゴールドバーグを攻撃するという展開もありました。しかし、ゴールドバーグがWWEを退団すると、ギルバーグも姿を消しました。

その後

2007年12月10日、WWE・RAW 15th Anniversaryに登場。オールドタイマーによる15人バトルロイヤルに出場しましたが、ゴングが鳴ると参加レスラー全員に担がれ、リングを一周した後、場外に投げ捨てられました。

2017年2月13日、WWE・RAWにて10年ぶりとなる登場を果たします。ゴールドバーグに対戦を申し込んだケビン・オーエンズに対して、クリス・ジェリコから皮肉を込めた意味で呼び込まれましたが、入場後、場外で襲撃を受け、リングに叩きつけられてフェードアウトしました。

得意技

ギルバーグは、ビル・ゴールドバーグのパロディ・ギミックに基づき、ゴールドバーグと同じ技を使用します。

ジャック・ハマー：ブレーンバスターで持ち上げてパワースラムのように体重を乗せてマットに叩きつける。ゴールドバーグの絶対的フィニッシャーをそのままコピーした技です。
スピアー：姿勢を低くしながら走り、相手の腹部へアメフトのタックルのように強烈に右肩を突き刺す。こちらもゴールドバーグの得意技をコピーしたものです。

獲得タイトル

ASWAタッグチーム王座 : 2回（w / アゴニー)
ECPWタッグチーム王座 : 1回（w / エクスキューショナー#2）
EWFタッグチーム王座 : 1回（w / アゴニー）
MEWFタッグチーム王座 : 1回（w / アゴニー）
NWA New Jerseyジュニアヘビー級王座 : 1回
WWA世界タッグチーム王座 : 5回（w / バリー・ハーディー×3、ウェイン・ギル×2）
* WWFライトヘビー級王座 : 1回

ドゥエイン・ギルは、ギルバーグというユニークなキャラクターを通じて、プロレス史にその名を刻みました。彼のパロディ精神は、多くのファンを魅了し、今もなお語り継がれています。

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