ドゥッラーニー朝

ドゥッラーニー朝：アフガニスタンの興亡と二つの王朝

18世紀のアフガニスタンにおいて、大きな影響力を持った王朝がドゥッラーニー朝です。その歴史は、アフマド・シャーによる建国から始まり、サドーザイ朝、そしてバーラクザイ朝と、二つの王朝に分けて記述することができます。しかしながら「ドゥッラーニー朝」の定義は明確ではなく、サドーザイ朝のみを指す狭義の解釈と、サドーザイ朝とバーラクザイ朝を含めた広義の解釈が存在します。

ドゥッラーニー朝の成立とサドーザイ朝

1747年、パシュトゥーン人のドゥッラーニー部族連合、サドーザイ部族出身のアフマド・シャーは、イランのアフシャール朝からの独立を果たし、ドゥッラーニー朝を建国しました。「ドゥッラーニー」はパシュトゥーン語で「真珠の時代」を意味し、この王朝がアフガニスタンに繁栄をもたらしたことを示唆しています。

サドーザイ朝は、アフマド・シャーとその子孫による支配を特徴とします。彼らは、周辺勢力との外交を巧みに操りながら、勢力拡大を図りました。特にインド方面への侵攻は活発で、弱体化していたムガル帝国に何度も攻め入り、一時期はデリーを支配下に置いたほどです。また、中国の清王朝とも国境を接しており、朝貢国として関係を築いていました。

サドーザイ朝の治世は、軍事的な成功と外交努力によって支えられていました。しかし、内部の権力闘争や周辺勢力の圧力など、多くの困難にも直面しました。

バーラクザイ朝とドゥッラーニー朝の終焉

1826年、サドーザイ朝は王家内部の分裂により終焉を迎えました。バーラクザイ部族がサドーザイ朝を滅ぼし、新たな王朝、バーラクザイ朝が誕生します。バーラクザイ朝は、サドーザイ朝とは異なる王族によって統治されましたが、ドゥッラーニー朝全体の継続として捉えられることも多く、ドゥッラーニー朝をサドーザイ朝とバーラクザイ朝を合わせた期間とみなす解釈の根拠となっています。

バーラクザイ朝は、サドーザイ朝に比べて、周辺勢力との関係や国内の安定維持に苦労しました。最終的に、1973年にアフガニスタンの近代国家樹立により、ドゥッラーニー朝は歴史の幕を閉じました。

歴代君主と名称の混乱

ドゥッラーニー朝の歴代君主は、サドーザイ朝とバーラクザイ朝に分けられます。サドーザイ朝では、アフマド・シャー、ティムール・シャー、ザマーン・シャーなど、多くの君主が統治しましたが、その治世は必ずしも安定したものではありませんでした。頻繁な王位継承争いや内紛が頻発し、王朝の弱体化を招いた側面もありました。

バーラクザイ朝の君主については、バーラクザイ朝に関する記述を参照ください。

「ドゥッラーニー朝」という名称は、その範囲について曖昧さが残ります。「サドーザイ朝」、「サドーザイ朝とバーラクザイ朝」、「ドゥッラーニー朝（サドーザイ朝）＋ドゥッラーニー朝（バーラクザイ朝）」など、複数の解釈が存在します。歴史研究においては、これらの違いを明確に区別した上で議論を進めることが重要です。

ドゥッラーニー朝の意義

ドゥッラーニー朝は、アフガニスタンの歴史において重要な役割を果たした王朝でした。その興亡は、周辺地域との複雑な関係、内部の権力闘争、そして近代国家の成立といった、様々な要因が絡み合って生じたものです。ドゥッラーニー朝の歴史を理解することは、アフガニスタンという国の形成と発展を理解する上で不可欠です。

参考文献

* 杉山正明　『モンゴルが世界史を覆す』　日本経済新聞社〈日経ビジネス文庫〉、2006年3月、ISBN 4-532-19325-7。

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