ドナルド・トムソン

ドナルド・ファーガソン・トムソンの生涯と業績

ドナルド・ファーガソン・トムソン（1901年～1970年）は、オーストラリアの人類学者であり鳥類学者として知られています。彼は、オーストラリアの先住民文化における理解を深めるために、多くの重要な業績を残しました。特に、彼の活動はカレドン湾危機において顕著であり、アボリジニと非アボリジニの関係における重要な転換点とされています。

生い立ちと教育

トムソンはメルボルン大学で動物学や植物学を学んだ後、1917年に王立オーストラリア鳥類学会（RAOU）に入会しました。彼は、1925年に大学を卒業し、同年にグラディス・コールマンと結婚しました。人類学に対する関心を深め、シドニー大学でディプロマ・コースを修了した後、ヨーク岬半島の先住民と共に生活し、彼らの文化や生活様式を記録しました。この経験が、彼の人類学者としてのキャリアに大きな影響を与えました。

彼の初期のキャリアは波乱に満ちており、資金の不正流用に絡んで背任で告発される事態が発生しましたが、これは後にオーストラリア研究会議の不正によるものであることが明らかになりました。この出来事により、彼の人間関係に影響を及ぼしましたが、その後も研究を続けました。

カレドン湾危機と先住民との結びつき

1932年から1933年にかけて、カレドン湾での危機が発生。トムソンはこの問題の解決に尽力し、オーストラリア政府に協力を要請しました。驚くべきことに、彼は危機の解決に成功し、アボリジニと非アボリジニの関係における歴史的な転換点を形成することとなりました。この功績は彼の業績の中でも特に評価されています。

トムソンが残した約4000点のガラス乾板による白黒写真は、ミュージアム・ビクトリアに保管され、特にアラフラ湿原での写真が高く評価されています。これらの写真は、彼の撮影したカヌーを進める男性たちのものが映画『Ten Canoes』のタイトルに影響を与えました。

戦時中の活動と探検

1941年、彼はヨルング族と強い絆を結び、地域の独特な文化を学びました。さらに、彼は陸軍を説得し、ヨルング族の男性たちからなる特別偵察隊、ノーザン・テリトリー特別偵察隊（NTSRU）の編成を実現しました。これにより、日本軍に対抗するための重要な役割を果たしましたが、1943年には部隊が解散し、その後彼は空軍に戻ることとなりました。第二次世界大戦中、ニューギニアでの任務中に重傷を負い、後に空軍を退役しました。

先住民との新たな接触

1957年には、ビンディブ遠征を行い、オーストラリア西部の砂漠に暮らすピントゥピ族との接触を図りました。彼の探求は、その多くがヨーロッパ系の人間と初めて対面する機会となったことから、歴史的な意義を持っていました。

トムソンはフィールドノートや写真を通じて貴重な民族誌的記録を残し、ピントゥピ族にとっても重要な文化的資料となりました。彼はその後メルボルン大学に戻り、1970年に亡くなるまで、学問に尽力しました。

遺産と記録

トムソンの記録資料は、彼の死後未亡人によって寄託され、現在では教育や研究の重要な資源として利用されています。また、彼の名は2008年にUNESCOの世界の記憶に登録されるなど、学術界での評価は高まっています。彼の著書や調査は、オーストラリアでは未だに重要な参照として扱われています。

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