ドニントン・グランプリ・コレクション

ドニントン・グランプリ・コレクション：45年の歴史を刻んだレーシングカーの殿堂

レスターシャーのドニントン・パークに位置していたドニントン・グランプリ・コレクションは、1973年3月の開館から2018年11月の閉館まで、実に45年間にわたり、来場者を楽しませ続けたレーシングカー博物館でした。

トム・ウィートクロフトの情熱から生まれたコレクション

この博物館の起源は、1971年にドニントン・パークを購入したトム・ウィートクロフト氏の情熱にあります。ウィートクロフト氏は、自らも自動車コレクターであったことから、自身の膨大なコレクションを基に、博物館を設立しました。展示の中核は、グランプリやフォーミュラ1で使用されたシングルシーターマシンでした。

当初はウィートクロフト氏の個人コレクションが中心でしたが、その後、積極的に他の所有者から車両の貸し出しや譲渡を受け入れることで、コレクションは規模を拡大していきました。ロジャー・ウィリアムソンやデレック・ベルといった、ウィートクロフト氏が所有するレーシングチームで活躍したドライバーたちが実際に操縦したマシンも展示され、来場者の注目を集めました。

特に、マクラーレンとウィリアムズといったイギリスを代表するF1チームからは多くの車両が貸し出され、それぞれのチームの1970年代から2000年代までの歴史をたどる展示空間が設けられていました。マシン以外にも、ドライバーたちが実際に使用していたヘルメットや、レースに使用されたエンジンなども展示され、来場者はレーシングカーの世界を多角的に楽しむことができました。コレクションの規模は100台を超えるまでに成長し、世界中のモータースポーツファンにとって貴重な存在となりました。

閉館までの経緯

2009年10月、創設者トム・ウィートクロフト氏の逝去を受け、グランプリ・コレクションは一時的に閉鎖されました。翌年には再開されましたが、サーキットの財政問題が深刻化し、一部の車両が売却される事態となりました。

その後、ドニントン・パークはトム・ウィートクロフト氏の息子であるケビン・ウィートクロフト氏に引き継がれましたが、ケビン氏は軍事コレクターとしても知られており、そのコレクションの一部もグランプリ・コレクションで展示されるようになりました。

2017年には、ドニントン・パークの運営はモータースポーツ・ビジョン社（MSV）に委託されました。しかし、MSVは2018年10月、グランプリ・コレクションの継続が困難であると判断し、翌11月をもって閉館することを発表しました。貸し出されていた車両は所有者に返却され、所蔵車両は売却されました。ケビン・ウィートクロフト氏もこの決定に同意しました。

閉館後、博物館の建物は「旧博物館（The Old Museum）」と名付けられ、イベントスペースとして活用されています。

貴重なコレクションと惜しまれる閉館

ドニントン・グランプリ・コレクションは、イギリスのモータースポーツ史における重要なコレクションを展示することで、多くのファンに感動と興奮を与え続けました。その閉館は、多くのファンにとって大きな損失となりましたが、45年間にわたる博物館の歴史は、多くの人の記憶に深く刻まれています。展示されていたマシンやアイテムの数々は、新たな場所で新たな歴史を刻み続けることでしょう。

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