ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の独立承認に関するウラジーミル・プーチンの演説

プーチン大統領の演説：ドネツク、ルガンスク人民共和国の独立承認

2022年2月21日、ウラジーミル・プーチン大統領はテレビ演説を行い、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の独立を承認すると発表しました。この演説は、2021年から2022年にかけて激化したロシアとウクライナの危機の重大な転換点となりました。

演説の内容

演説の冒頭で、プーチン大統領は「ドンバス地域の状況は危機的で重大な段階に達した」と述べ、ウクライナを「歴史、文化、精神空間の不可分な一部」と位置づけました。そして、ウクライナとソビエト連邦の歴史に関する独自の主張を展開しました。

プーチン大統領は、現代のウクライナは1917年にボリシェヴィキによって創設されたと主張し、ヨシフ・スターリンがソビエト連邦の憲法から「革命的な夢想」を排除しなかったこと、そしてミハイル・ゴルバチョフの改革がソ連崩壊と「歴史的ロシアの崩壊」を招いたと述べました。

さらに、プーチン大統領は、ソ連崩壊後のロシアが他の旧ソ連諸国を支援してきたにもかかわらず、ウクライナはソ連の資産の分配を要求し続け、西側諸国を利用してロシアからの優遇措置を引き出そうとしてきたと批判しました。

また、ウクライナが「ナショナリズムと汚職に汚染されている」と非難し、2014年のウクライナ騒乱を西側諸国が主導したクーデターと位置づけました。さらに、ウクライナ政府がロシア語話者を差別し、核兵器の開発を試み、NATO軍の進駐を容認するなど、ロシアに対する敵対行為を行っていると主張しました。プーチン大統領は、NATOの東方拡大がロシアの安全保障に対する脅威であると強調しました。

最後に、プーチン大統領は、ウクライナがミンスク合意を遵守していないため、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の独立を承認するという「遅延された決定」を下す必要があったと説明しました。そして、ウクライナ政府に対し、即時の「戦争行為の停止」を求め、さもなければ「流血の責任はウクライナ政権にある」と警告して演説を終えました。

反響

この演説は、ロシアのナショナリズム、帝国主義、領土回復主義、歴史修正主義の表れとして、国際社会から強い警戒心をもって受け止められました。

ガーディアン紙の記者は、プーチン大統領が演説中に「怒っており、熱がこもっている」と評し、演説を「腹を立てて、長ったらしくてまとまりのない講釈」と形容しました。フォーリン・ポリシー誌は、この演説を「意味不明で、支離滅裂で、怒りに満ちた演説」とし、かつてのロシア帝国主義の犠牲者である近隣諸国を大いに困惑させたと述べました。オーストラリア国立大学の研究者は、プーチン大統領が「歴史に関する理解があやふやなロシアの超国家主義者」に見え、この演説を「冷戦終結の歴史を書き換えるための個人的使命」として利用していると指摘しました。

特に、ウクライナが1917年のロシア革命後にレーニンとボリシェヴィキによって創設されたという主張に対して、多くの専門家が異議を唱えました。ハーバード大学の教授は、この主張を「歴史の突飛な解釈」であるとし、現代のウクライナ国家はレーニンの意志に反して誕生したと反論しました。カリフォルニア大学バークレー校の研究者は、この演説を「プーチン大統領によって書き換えられた歴史」であり、「自己決定権の否定」であると批判しました。また、現代史研究センターの研究者は、ウクライナ人の国民意識は19世紀にはすでに存在しており、プーチン大統領は「帝政ロシアの帝国主義的な野望を再燃させている」と指摘しました。

出典

この演説は、ロシアによるウクライナ侵攻を正当化するためのプロパガンダとして利用され、国際社会において大きな議論を呼びました。演説は、ロシアの政治体制、歴史観、そして領土に対する野心を理解する上で重要な資料です。


関連情報:

ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について
ロシア連邦とドネツク人民共和国及びルガンスク人民共和国との間の友好協力相互支援協定
ウクライナのロシア化
ソビエト・ウクライナ戦争
ウクライナとNATOの関係
ロシアによるウクライナ4州の併合宣言


外部リンク:

* ロシア大統領府 - 演説全文（英語）

もう一度検索