ドミトリー・トルストイ

ドミトリー・アンドレーエヴィッチ・トルストイ伯爵

ドミトリー・アンドレーエヴィッチ・トルストイ伯爵（1823年 - 1889年）は、帝政ロシアの重要な政治家であり、トルストイ伯爵家の一員です。彼はロシア帝国の国家評議会議員（1866年）や教育大臣、内務大臣を歴任し、そのキャリアにおいて多くの重要な役割を果たしました。

生涯とキャリアの始まり

彼は1843年にツァールスコエ・セロー・リツェイを卒業しました。その後、1853年に海軍省に官吏として入省し、政界での道を歩み始めます。1865年から1880年まで、彼は聖務会院のOber-prokurorを務め、その傍らで教育大臣として国民向けの教育政策に取り組みました。1871年には大学改革を実施し、古典文学や特にラテン語・ギリシャ語教育に力を入れたものの、この改革は結局、復古的な教育スタイルを助長する結果に終わってしまいました。

内務大臣としての役割

1882年、トルストイ伯爵は内務大臣兼憲兵隊司令官に就任しました。この時期、彼はA・パズーヒンとともに「反改革」と呼ばれる政策を主導しました。彼はロリス＝メリコフが推進していたゼムストヴォ（地方自治）や地主貴族による権力分立を否定し、中央政府の統制を強化する方針を採りました。

彼は内務省の下にゼムスキー・ナチャーリク（地方牧民官）を設置し、その結果、行政権と司法権を一元化。これにより、地方の権限が制限され、中央集権的な体制が強化されました。また、選挙権の制限や市議会の縮小が行われ、地域自治体に対する中央の監督が厳格化されました。

さらに、1882年には「臨時規則」を発布し、新聞や出版の自由を大きく制限しました。これは国民の間で大きな反発を招き、社会における不満の声を増加させる要因となりました。

社会への影響と業績

トルストイ伯爵の政治活動には、様々な側面がありました。彼の政策は一方で中央集権化を進め、国民の自由を制限した一方、他方ではロシア社会から排除されつつあったモロカン派の信者を自身の所領で保護する姿勢も見せました。

また、1882年には帝国のサンクトペテルブルク科学アカデミーの総裁に選ばれ、ロシア史に関するいくつかの著作を発表しています。彼の業績は、ロシアの教育や社会政策の方向性に多大な影響を与えたものと評価されています。トルストイ伯爵の政治家としての生涯は、帝政ロシアの複雑な政治状況における一つの象徴とも見なされています。

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