ツァールスコエ・セロー・リツェイ

ツァールスコエ・セロー・リツェイ、または帝国学習院は、ロシア帝国のサンクトペテルブルク郊外、ツァールスコエ・セローに位置した由緒ある教育機関です。創設者である皇帝アレクサンドル1世の名を冠し、「帝国アレクサンドル・リツェイ」とも呼ばれました。1811年、将来帝国の要職を担うであろう貴族子弟の教育を目的として設立され、内務省の管轄下に置かれました。

特に文学史においては、詩人アレクサンドル・プーシキンの才能が開花した場所として知られています。プーシキンは、リツェイでの経験を詩に詠み、その名を後世にまで轟かせました。

設立と初期の様子

リツェイの設立に関する準則は1811年1月に公布されましたが、皇帝の承認はそれ以前の1810年8月に行われました。エカテリーナ宮殿に隣接する4階建ての建物が寄宿舎として使用され、病院や食堂などの施設も完備されました。家具や調度品は、新古典主義建築の建物に合わせてヴァシーリー・スターソフがデザインしました。開校は1811年10月18日です。

最初の卒業生の中には、プーシキンと、後にロシア帝国の外務大臣となったアレクサンドル・ゴルチャコフが含まれていました。19世紀前半のロシア貴族社会では、子弟を大学に進学させるよりも、リツェイや陸軍幼年学校で教育を受けさせ、国家に奉仕させる傾向が強かったようです。

教育内容と学校の雰囲気

リツェイは自由な学風で知られ、当初の修学期間は6年間でした。1836年以降は、3年コースを2回、1年半コースを4回とする制度が追加されました。リツェイでは、以下のような幅広い分野の教科が教えられました。

哲学・道徳: 神学、倫理学、論理学、法学、政治経済
語学・文学: ロシア語、ラテン語、フランス語、ドイツ語とその文学、修辞学
歴史: ロシア史と世界史、地理学
理数: 数学、物理学、天文学、宇宙論、地学、統計学
* 美術・体育: 書道、絵画、ダンス、フェンシング、乗馬、水泳

リツェイの卒業は大学卒業と同等とみなされ、軍隊を志願する生徒には軍事教練が加えられました。また、リツェイの特筆すべき点として、学校憲章に生徒への体罰を禁止する条項があったことが挙げられます。

開校記念日とリツェイのその後

10月18日の開校記念日は、毎年盛大な祝賀会が催され、プーシキンは新作の詩を披露していました。リツェイの卒業生の中には、1825年のデカブリストの乱に参加したヴィルヘルム・キューヘルベッカーやイヴァン・プーシチンもおり、プーシキンもこの運動に関与していたとされています。

1844年1月、リツェイはサンクトペテルブルク市街に移転し、その後は「アレクサンドル・リツェイ」と呼ばれることが多くなりました。しかし、ツァールスコエ・セローに残された文学の伝統は、アンナ・アフマートヴァやインノケンティー・アンネンスキーなどの詩人によって20世紀まで受け継がれました。

ツァールスコエ・セローにリツェイがあった33年間で、286名の生徒が卒業しました。著名な卒業生には、アントン・デリヴィッグ（ジャーナリスト）、ニコライ・ギールス（政治家、外務大臣）、ドミトリー・トルストイ（政治家、内務大臣）、ヤコブ・グロット（文献学者、言語学者）、ニコライ・ダニレフスキー（歴史学者、人類学者）、アレクセイ・ロバノフ＝ロストフスキー（政治家、外務大臣）、フョードル・イポリトビッチ・シチェルバツコイ（インド学者、仏教学者）、ミハイル・サルトィコフ＝シチェドリン（小説家、風刺作家）などがいます。

帝国リツェイ（帝国学習院）は、1917年のロシア革命によって社会主義政権が成立した際に廃止されました。

リツェイは、ロシアの歴史と文化において重要な役割を果たし、多くの優れた人材を輩出した名門校でした。

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