ドメニコ・サッロ

ドメニコ・サッロ

ドメニコ・サッロ（Domenico Sarro）は、1679年12月24日にこの世に生を受け、1744年4月26日にその生涯を閉じたイタリアの作曲家です。彼は18世紀初頭のヨーロッパ音楽界において重要な位置を占めていたナポリ楽派の一員として活動しました。ナポリ風にドメニコ・サッリ（Domenico Sarri）とも呼ばれることがあります。

生涯

サッロはイタリア南部のプッリャ州にあるトラーニの出身です。若い頃に音楽を学ぶため、当時の音楽教育の中心地の一つであったナポリへ移り住み、高名な聖オノフリオ音楽院で研鑽を積みました。その才能は早くから認められ、1703年にはナポリ王国の宮廷楽長という極めて権威あるポストの候補者となります。この時の応募者の中には、ガエターノ・ヴェネツィアーノやフランチェスコ・マンチーニといった、後にナポリ楽派を代表する作曲家たちが名を連ねていました。

楽長の座はヴェネツィアーノが獲得しましたが、サッロはその翌年、1704年には副楽長の地位に就任します。これは彼の能力が高く評価されていた証と言えるでしょう。しかし、当時のナポリはスペイン継承戦争の渦中にあり、政治情勢が不安定でした。1707年にオーストリア軍がナポリを占領すると、宮廷の体制は大きく変化し、ヴェネツィアーノとサッロはともに宮廷の職を解かれることとなります。

一時的に宮廷を離れたサッロですが、作曲家としての活動は継続しました。特にオペラの分野で精力的に創作を行い、1718年以降、多くの作品を発表しています。彼の代表作の一つとして挙げられるのが、1724年に作曲されたオペラ『捨てられたディドーネ』（Didone abbandonata）です。この作品は、イタリアオペラの歴史において非常に重要な位置を占める台本作家、ピエトロ・メタスタージオが手がけた最初のオペラ台本に曲を付けたことで特に知られています。サッロの音楽は、メタスタージオの劇的なテキストを見事に表現し、大きな成功を収めました。

彼のキャリアは再び上昇線を描きます。1725年にはナポリ宮廷の副楽長に復帰し、かつて就いていた地位を取り戻しました。さらに1728年からは、ナポリ大聖堂の楽長も兼任するようになります。これは、宮廷音楽と教会音楽の両方の分野で彼が指導的な役割を担うようになったことを意味します。大聖堂楽長としては、宗教音楽の作曲や演奏を統括しました。

1737年、宮廷楽長のフランチェスコ・マンチーニが死去すると、サッロは遂に念願の宮廷楽長の地位に昇格します。これは、ナポリ王国における音楽家の最高位であり、彼の長年にわたる功績と実力が認められた結果でした。同年には、当時ヨーロッパ最大級のオペラハウスとして建設されたサン・カルロ劇場のこけら落とし公演のために、オペラ『スキュロスのアキレウス』（Achille in Sciro）を作曲しています。この作品は、新たな時代の到来を告げる劇場のために書かれた記念碑的作品となりました。

ドメニコ・サッロは、ナポリ楽派の発展に貢献し、特にオペラ作曲家として重要な足跡を残しました。彼の作品は当時の人々に愛され、ナポリの音楽文化の隆盛に大きく寄与したのです。

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