サン・カルロ劇場

サン・カルロ劇場：ヨーロッパ最古の歌劇場の歴史と魅力

イタリア・ナポリに位置するサン・カルロ劇場は、ヨーロッパで現役最古の歌劇場として知られています。1737年の開場以来、数々の名作オペラの上演を続け、音楽史に燦然と輝く歴史を誇ります。その歴史と魅力を、時代を追いながら紐解いていきましょう。

18世紀：華麗なる誕生とナポリ音楽の中心地

サン・カルロ劇場は、ブルボン朝ナポリ王カルロ7世（後のスペイン王カルロス3世）の命によって建設されました。1737年11月4日、国王の聖名祝日に行われたこけら落とし公演は、メタスタージオ作詞、サッロ作曲のオペラ『スキロス島のアキレウス』でした。壮麗な建築、金装飾、そしてブルボン家の象徴である青色の布張りは、人々を魅了しました。

当時、ナポリはヨーロッパ音楽の中心地として隆盛を極めていました。オペラ・セリア、オペラ・ブッファの分野で、レーオ、ポルポラ、トラエッタなど多くの作曲家が活躍し、ハッセ、ヨハン・クリスティアン・バッハ、グルックといった国際的な作曲家も、サン・カルロ劇場での公演をキャリアの頂点と見なしていました。

劇場の舞台を彩った歌手たちもまた、輝かしい顔ぶれです。ルクレツィア・アングイアーリ、カファレッリ、ファリネッリ、ジジエッロといった名カストラートたちが、その美声で聴衆を酔わせました。

19世紀：火災からの奇跡の復活とロッシーニ、ドニゼッティ時代

1816年、サン・カルロ劇場は火災で焼失するという大きな危機に見舞われます。しかし、フェルディナンド1世（カルロス3世の子）の命により、わずか10ヶ月で再建されました。現在の劇場の基礎はこの時の再建に遡ります。

再建後、ロッシーニが劇場付作曲家兼音楽監督を務め、『イングランドの女王エリザベッタ』『オテロ』『アルミーダ』など数々の傑作オペラを生み出しました。マリア・マリブラン、ジュディッタ・パスタといったスター歌手たちが舞台を飾り、サン・カルロ劇場は再び華やかな時代を迎えました。

ロッシーニの後には、ドニゼッティが劇場付作曲家兼音楽監督となり、『マリア・ストゥアルダ』『ランメルモールのルチア』『ロベルト・デヴリュー』など多くのオペラを創作しました。しかし、『ポリウト』は検閲のためナポリでの上演が許されず、初演はパリで行われました。

ヴェルディもまた、サン・カルロ劇場と深い繋がりを持ち、『アルツィラ』『ルイザ・ミラー』をこの劇場のために作曲しました。『仮面舞踏会』も当初はサン・カルロ劇場で上演される予定でしたが、検閲のため上演地が変更されました。

20世紀以降：革新と伝統の継承

20世紀に入ると、革新的な支配人アウグスト・ラグーナが、ワーグナー作品を積極的に取り上げるなど、イタリアのオペラ界に新風を吹き込みました。第二次世界大戦後も、いち早く海外公演を行い、アルバン・ベルクの『ヴォツェック』のイタリア初演など、オペラ劇場としての役割を果たし続けました。近年では日本への海外公演も実施するなど、その活動は世界へと広がっています。

サン・カルロ劇場：未来への幕開け

サン・カルロ劇場は、単なる歌劇場としてだけでなく、ナポリ、そしてイタリアの音楽文化を象徴する存在です。歴史と伝統を継承しながら、常に新しい挑戦を続けるその姿は、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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