ドラムコー

ドラムコー (Drum Corps) とは

ドラムコーとは、ドラムアンドビューグルコー（Drum and Bugle Corps）の略称であり、金管楽器、打楽器、そして視覚的な彩りを添えるカラーガードによって構成される、ダイナミックなマーチングアンサンブルです。多くは独立した非営利団体として運営され、競技会、パレード、フェスティバルなど、様々な舞台で観客を魅了するパフォーマンスを繰り広げます。

マーチングバンドの一形態と捉えられることもありますが、そのルーツは軍隊における歩調統制や信号伝達部隊にあります。そのため、音楽演奏を主とするマーチングバンドとは異なる独自の歴史を歩み、発展を遂げてきました。

各団体は、毎年趣向を凝らした新作ショーを披露します。そのレパートリーは非常に幅広く、クラシック、ジャズ、ビッグバンド、コンテンポラリー、ロック、ラテン音楽、ブロードウェイの楽曲など、あらゆるジャンルを網羅しています。

ドラムコーの歴史

太鼓は、古代ローマ時代から行軍時の歩調を合わせるために用いられてきました。また、信号ラッパは、通信手段が発達していなかった時代に、軍隊内で命令を伝達する重要な役割を担っていました。これらの要素が組み合わさり、訓練の一環として、また公式行事における儀礼的な演奏を目的として、ドラムコーは発展してきたのです。現在では、軍隊にとどまらず、青少年の健全育成や社会人の音楽活動としても親しまれています。

アメリカでの歴史

ドラムコーは、アメリカとカナダの軍隊の歴史に深く根ざしています。第一次世界大戦後から1970年代にかけて、多くのドラムコーや大会が、VFW（海外戦争退役軍人会）、ボーイスカウト、教会、カナダ王立軍団、アメリカンリージョンなどの支援を受けていました。このような背景から、ドラムコーは伝統的に軍隊的な要素を色濃く残していました。

1960年代後半になると、各団体はより自由な創作活動と経済的な支援を求めるようになります。スポンサーからの支援が公平でないと感じる団体や、審査方法が構成や音楽の観点から制約的だと感じる団体も現れました。その結果、アメリカとカナダに存在した約1000のドラムコーのうち、一部が団結を決意し、DCA（1965年設立）やDCI（1972年設立）といった組織の設立につながりました。

組織運営の独立性を高めた一方で、コンテスト数の減少や遠征費の増加により、各団体の経済的、時間的負担は増大しました。また、ショーの高度化に伴い、創造性や指導力の要求水準も高まり、解散を余儀なくされる団体も少なくありませんでした。しかし、新たな団体も誕生し、成功を収めています。

伝統的なルールからの解放を受け、B♭管楽器の採用、テンポの多様化、複雑なフォーメーション、精巧なカラーガードの衣装や道具、大型鍵盤楽器の使用など、革新的な変化が起こりました。

日本での歴史

1970年代以降、日本国内にDCAやDCIが紹介され、草分け的な団体が誕生しました。1971年には須磨ノ浦女子高校にドラム＆ビューグルコーが創部され、1975年には日本ビューグルバンドが日本の一般団体として初めてDCIにエキシビション参加を果たしました。

1980年代に入ると、東京ビューグルバンド（後の創価ルネサンスバンガード）やロイヤルキルティーズ（現Pride of Soka）が結成され、神奈川県ではYokohama INSPIRESが誕生するなど、各地で活動が活発化しました。

1980年代後半からは、ドラムコーの数が増加し、全国組織であるドラムコージャパン（DCJ）が設立されました。1990年代には、DCIやDCAの大会に参加する団体も現れ始めました。

2000年代以降は、活動を休止する団体も目立つようになりました。DCIのレギュレーション改正の影響や、少子化などの社会情勢も重なり、ドラムコーの団体数は減少傾向にあります。しかし、Yokohama INSPIRES AlumniのようなOB・OGによる団体や、The Knightsのように立奏を主とする団体も現れ、ドラムコーの活動は多様化しています。

使用される楽器

ドラムコーで使用される楽器は、大きく打楽器と管楽器に分けられます。

打楽器: マーチングスネアドラム、マーチングテナードラム、マーチングバスドラム、マーチングシンバルなど、歩きながら演奏することを目的とした楽器が中心です。フロントピットと呼ばれる場所では、マリンバ、シロフォン、ヴィブラフォン、グロッケン、コンサートバスドラム、ティンパニなどが使用されます。
管楽器: かつてはビューグルが主流でしたが、近年ではマーチングブラスも広く使用されています。トランペット、コルネット、メロフォン、ホルン、バリトン、ユーフォニアム、チューバなどが代表的な楽器です。

大会

DCI (Drum Corps International): 世界最高峰のドラムコー競技大会。21歳までの年齢制限があります。
DCA (Drum Corps Associates): 年齢制限のないドラムコー競技大会。
* DCJ Championship (Drum Corps Japan): 日本国内のドラムコー競技大会。年齢制限はありません。

日本の主な団体

Blue Saints、Cherry Blossoms、Pride of Soka、YAMATOなど、数多くの団体が日本各地で活動しています。これらの団体は、G基調ビューグルを使用する団体と、Any Keyのマーチングブラスを使用する団体に分かれています。

ドラムコーは、音楽と視覚効果が融合した、他に類を見ない芸術形態です。その迫力ある演奏と華麗なパフォーマンスは、観る者を魅了し続けています。

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