ドラヴィヤ・シャハ

ドラヴィヤ・シャハ（Dravya Shah、生年不詳 - 1570年）は、ネパールにおける歴史上重要な存在であるゴルカ王国の初代君主と伝えられています。彼の治世は1559年から1570年までとされています。

彼の出自については、伝説的な記述が多くを占めています。伝えられる系譜によれば、ドラヴィヤはラムジュン王ヤショー・ブラフマ・シャハの息子であり、さらにその父はカスキ王クルマンダン・シャハで、この祖父がシャハ姓を名乗った最初の人物とされています。この血筋をさらに遡ると、インドのメーワール王国（チットール）にいたというリシ・ラージャにたどり着くとされていますが、これらの記述は伝説に基づくものです。

ドラヴィヤが活動した当時のゴルカ周辺、いわゆるガンダキ地方は、大小様々な勢力が割拠する二四諸国と呼ばれる状態にありました。ゴルカもその一つでしたが、当時はセーナ王国のムクンダ・セーナに支配された後、カンドカーという人物の統治下にあったとされています。また、この時代のゴルカは、数ある諸国の中でも特に規模が小さく、独立した国家として認識されることも少ない存在でした。

状況が大きく動いたのは1559年のことです。この年の9月、ドラヴィヤ・シャハはゴルカを支配していたカンドカーを打ち破り、この地を自らの支配下に置きました。この勝利の後、ドラヴィヤはゴルカで戴冠式を執り行い、ここを新たな王国の首都と定めたのです。この出来事が、後のネパール全土を統一するゴルカ朝、すなわちゴルカ王国の始まりと考えられています。

しかし、ドラヴィヤ・シャハという人物の実在性については、歴史学的な議論の対象となっています。彼の存在を直接的かつ根本的に裏付ける史料が現在のところ確認されていないため、一部には彼の存在そのものを疑問視する見解も存在します。一方で、歴史家の佐伯和彦氏は、ドラヴィヤが即位したとされる1559年という年代が、ゴルカ王統譜や複数の暦書といった他の史料でも一致している点を指摘し、彼の実在には十分な可能性があるとしています。このように、彼の存在は完全に確定されているわけではなく、研究が進められている状況です。

ドラヴィヤ・シャハは、ゴルカを拠点とする王国を樹立した後、およそ11年間、その統治を行ったと伝えられています。そして、1570年に彼は死去しました。その後、ゴルカ王国の王位は、彼の息子であるプールナ・シャハによって継承されることとなりました。

ドラヴィヤ・シャハは、小国に過ぎなかったゴルカを一つのまとまりある王国へと変貌させ、後のゴルカ朝によるネパール統一という歴史的事業の起点を作った人物として、その名が伝えられています。

参考文献として、佐伯和彦著『世界歴史叢書 ネパール全史』（明石書店、2003年）などがあります。

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