ドリトル先生の郵便局

ドリトル先生と動物たちの郵便冒険記：『ドリトル先生の郵便局』の世界

ヒュー・ロフティング作『ドリトル先生の郵便局』は、1923年に発表された人気児童文学シリーズ『ドリトル先生物語』の第3作です。シリーズ作品の中でも特筆すべきは、そのユニークな設定と、動物愛あふれる物語展開でしょう。時系列的にはシリーズ第1作『アフリカゆき』の後に位置するものの、本作ではトミー・スタビンズは登場せず、三人称視点で物語が展開されます。

アフリカから始まる新たな冒険

物語は、ドリトル先生がアフリカの猿に流行した伝染病を終息させたお礼として贈られた二つの頭を持つ動物、オシツオサレツとの西アフリカへの航海から始まります。イギリスの寒さがオシツオサレツに合わないため、一行は避寒を兼ねた休暇を満喫します。しかし帰路、海上で奴隷商人ジェームス・ボーンズに夫を売られた女性ズザナと出会います。

イギリス海軍の戦艦バイオレットの協力を得て、ズザナの夫は無事に救出されます。しかし、夫が売られた原因は、ファンティポ王国の郵便制度の欠陥でした。ズザナが親戚に送った「夫の身柄と引き換えに家畜を用意してほしい」という手紙が、王国の郵便制度の不備により届いていなかったのです。

ファンティポ王国の郵政大臣

この事態を受け、ドリトル先生はファンティポ王国の国王ココに謁見し、郵便制度の問題点を指摘します。すると先生は、なんと郵政大臣に任命され、郵便局の再建を任されることになります。

無人島と恐竜の楽園

郵政大臣として働き始めたドリトル先生は、近海の無人島に興味を持つようになります。その島は、竜の噂で近寄る者がいない場所でしたが、そこには絶滅したと思われていた恐竜を始めとする草食動物の楽園が広がっていました。先生は動物たちの相談に乗ったり、動物同士の意思疎通のための文字を考案したりするうちに、世界最速の国際郵便システムのアイデアを思いつきます。

世界規模の郵便ネットワーク

ドリトル先生は、ツバメのネットワークを利用した国際郵便システムを構築します。ファンティポ港沖合に停泊した船上に国際郵便局を開設し、世界各地に支局を設けます。この国際郵便ネットワークは、人間と動物双方から絶大な人気を博し、先生はさらに通信教育や娯楽を提供する事業も展開します。

国内郵便とユニークな制度

内国郵便は、ロンドンスズメのチープサイドが仕切っています。喧嘩っ早いチープサイドは、しばしば問題を起こし、先生は月に一度、懲戒免職と復職を繰り返します。これは、チープサイドが不在になると、スズメによる郵便配達に支障をきたすためです。

『北極マンスリー』と動物たちの物語

極北の動物たちのために、先生は月刊誌『北極マンスリー』を創刊します。この雑誌には、ドリトル先生や動物たちの昔話が掲載され、読者投票も行われます。それぞれの昔話は、ユーモラスで心温まるエピソードで彩られています。

例えば、ドリトル先生の昔話では、先生が医師になったばかりの頃、友人のフィップスと共同でサナトリウムを開設した際のトラブルが描かれています。ガブガブの物語では、豚に伝わるおとぎ話、ダブダブの物語では猫との出会い、白ネズミの物語ではアルビノのネズミの生き様、ジップの物語では犬の飼い主を助けるお話などが語られます。その他にも、トートーと兄妹、オシツオサレツとダチョウの話など、多様な動物が登場する個性豊かな物語が楽しめます。

作品の舞台：ファンティポ王国と周辺地域

本作の舞台は西アフリカの架空の国、ファンティポ王国です。ココ王が治めるファンティポ王国は、奴隷貿易で利益を得ている一方、新しい物好きで、イギリスの郵便制度にいち早く注目し、王立郵便局を開設しています。しかし、集配機能は非常に不十分でした。

物語には、ファンティポ王国周辺の様々な場所が登場します。無人島、船上郵便局、スティヴン岬の灯台、ハーマッタン岩礁、ジュンガニーカ湖など、それぞれの場所でドリトル先生と動物たちは様々な出来事を経験します。

翻訳と出版

日本語版は、1952年に岩波少年文庫で井伏鱒二氏によって翻訳されて以来、多くの読者に親しまれています。2011年には角川つばさ文庫より新訳版が出版されています。

『ドリトル先生の郵便局』は、ユーモラスな動物たち、冒険、そして郵便制度というユニークなテーマが織りなす、魅力あふれる児童文学作品です。ドリトル先生と動物たちの活躍を通じて、友情、協力、そして社会貢献の大切さを学ぶことができるでしょう。

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