ドルカス

ドルカス（ギリシア語：Δορκάς または Δορκάδα）は、新約聖書に登場するヨッパ（現在のテルアビブ近郊）の女性信徒であり、その名はギリシア語で「かもしか（ガゼル）」を意味します。アラム語ではタビタ（Ταυιθά）と呼ばれていました。彼女はヨッパの教会において、貧しい人々への慈善活動に献身的に取り組み、その信仰と善行によって多くの人々に知られていました。

ある時、ドルカスは病に倒れ、そのまま亡くなってしまいます。彼女の死は、その貢献を知るヨッパの教会の人々にとって大きな悲しみでした。教会の人々は、ドルカスの死を伝えるため、使徒ペテロのもとに二人の使者を派遣しました。当時、ペテロは近郊の町ルダに滞在していました。

使者たちはペテロにドルカスの死を伝え、ヨッパに来てくれるよう懇願しました。ペテロは使者たちと共にヨッパへ向かい、ドルカスが安置されている部屋に入りました。そこには、ドルカスが作った服や着物が並べられており、彼女の生前の奉仕活動が偲ばれる状況でした。

ペテロは、部屋にいた人々を外に出し、一人でひざまずいて祈りました。その後、彼はドルカスに向かって「タビタ、起きなさい」と語りかけました。すると、ドルカスは目を開け、ペテロの方を見ました。ペテロは彼女の手を取り、起こしました。そして、ドルカスは生き返ったのです。この奇跡はヨッパ中に広まり、多くの人々が主を信じるようになったと伝えられています。

ドルカスの蘇生は、新約聖書に記されているイエス・キリストの復活の力を示す一つの証拠であると共に、使徒たちの信仰と祈りの力を象徴する出来事として、今日まで語り継がれています。また、ドルカスの生涯は、信仰に基づく善行の重要性を示す模範として、多くの人々にインスピレーションを与え続けています。参考文献として『新聖書辞典』（いのちのことば社、1985年）が挙げられます。

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