ドルビーサラウンド

ドルビーサラウンドは、ドルビーラボラトリーズによって1981年に開発された音響技術であり、家庭環境で映画館のようなサラウンドサウンド体験を可能にすることを目的としていました。この技術は、特にビデオテープやアナログビデオディスクといった媒体で、映画や映像作品の音声トラックに使用されました。

ドルビーサラウンドの基礎は、1977年に映画『スター・ウォーズ』で採用され、その効果が広く知られるようになったドルビーステレオにあります。ドルビーサラウンドは、このドルビーステレオのサラウンド体験を、家庭でも手軽に楽しめるように設計されました。

その技術的な特徴として、サラウンド成分、特にリアチャンネルの音声信号を、ステレオの左右チャンネルの信号差として記録する方法を採用しています。これにより、既存のアナログステレオ機器との互換性を保ちながら、サラウンド効果を再現することが可能になりました。通常のステレオ再生では問題なく音声が再生され、追加の機器がなくても基本的には音声を楽しむことができます。しかし、この方式では、リアチャンネルの信号は基本的にモノラルであり、低音成分は含まれていないという制約がありました。

ドルビーサラウンドの再生では、まず左右チャンネルの信号の差分を取り出し、約20ミリ秒（環境によって変動）の遅延を加えることで、リアチャンネルの信号として処理します。初期のアナログ処理では、時間遅延によるノイズの問題があったため、多くのサラウンドデコーダーやAVアンプでは、信号をデジタル化して処理する方式が採用されました。これにより、よりクリアなサラウンド効果が実現しました。

その後、ドルビーサラウンドのリアチャンネルがモノラルであることや、チャンネル数が不足しているという認識から、センターチャンネルを追加し、リアチャンネルをステレオ化するドルビープロロジックが開発されました。このドルビープロロジックでは、位相差だけでなく、ロジック回路を使用して方向性を強調することにより、チャンネル数を効果的に増やしています。ドルビープロロジックはドルビーサラウンドの信号をベースとしており、再生するデコーダー側の処理によってチャンネル数を増やしています。

ドルビープロロジックデコーダーやAVアンプでは、センターチャンネルは低音を含まない「ノーマル」モードが標準とされていました。これは、センタースピーカーの設置場所が多様であることへの配慮です。しかし、センターチャンネルにも低音を割り当てる「ワイド」モードも存在し、可能であれば低音をセンターチャンネルに割り当てることが推奨されていました。

ドルビープロロジックでは、センターチャンネルに3つ、リアチャンネルに1つ、さらにLFE（低音効果）チャンネルを加えたスピーカー構成が推奨されました。さらに進化版のドルビープロロジックIIでは、リアチャンネルがステレオ化され、ドルビーステレオに近いサラウンド体験を実現できるようになりました。これにより、より臨場感あふれるサウンド体験が家庭で楽しめるようになりました。

ドルビーサラウンドは、その後のドルビープロロジック、そしてドルビーデジタルへと続くサラウンド技術の基礎を築いた重要な技術であり、その歴史的な意義は大きいと言えるでしょう。

関連技術としては、以下のようなものが挙げられます。

DOLBY SURROUND 5.1
DOLBY SURROUND 7.1
DOLBY ATMOS
DOLBY VISION
DOLBY CINEMA
dts:X
Auro 11.1
IMAX ENHANCED
デジタル音響システム
サラウンド
* イマーシブサウンド/イマーシブオーディオ

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