ドルベイ・ドクシン

ドルベイ・ドクシン：モンゴル帝国の知られざる将軍

ドルベイ・ドクシン（生没年不詳）は、13世紀初頭にモンゴル帝国に仕えた将軍の一人です。彼はドルベン部族の出身で、その名は『元朝秘史』や『集史』などの史料に記録されています。しかし、彼の生涯やチンギス・カンに仕えるようになった経緯については、詳しいことは分かっていません。

生涯

ドルベイ・ドクシンが歴史に登場するのは、1217年のトゥメト族の叛乱討伐の時です。彼は「四駿」の一人であるボロクルと共に、トゥメト族が住むモンゴル高原北西部に派遣されました。しかし、進軍中にトゥメト族の奇襲を受け、ボロクルが戦死してしまいます。この事態に激怒したチンギス・カンは、自ら親征しようとしましたが、ムカリらに諫められ、ドルベイ・ドクシンにトゥメト族の平定を命じました。ドルベイ・ドクシンは見事にトゥメト族の平定に成功しますが、その近隣のキルギス族の叛乱が続いたため、最終的にはジョチによってこれらの部族は平定されました。

その後、チンギス・カンのホラズム遠征に従軍し、ホラズムの王子ジャラールッディーン・メングベルディーがインダス河を渡ってインド方面に逃れると、その追撃のために派遣されました。インドから帰還後は、ホラーサーン地方でメルブの叛乱鎮定などを行い、その後の消息は不明です。

人物

『元朝秘史』には、「ドリ・ブカ」という人物が千人隊長に任ぜられたという記述があり、この人物をドルベイ・ドクシンと同一人物とする説も存在します。しかし、音の違いから否定する説もあります。

ドルベイ・ドクシンは、モンゴル帝国の初期において、トゥメト族の平定やホラズム遠征など、重要な戦役に参加し、功績を挙げました。しかし、その生涯については不明な点が多く、今後の研究が待たれます。

参考文献

志茂碩敏『モンゴル帝国史研究 正篇』東京大学出版会、2013年
杉山正明「モンゴルの破壊という神話」『ユーラシア中央域の歴史構図－13～15世紀の東西』総合地球環境学研究所イリプロジェクト、2010年
村上正二訳注『モンゴル秘史 2巻』平凡社、1972年
村上正二訳注『モンゴル秘史 3巻』平凡社、1976年

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