ドレゴヴィチ族

ドレゴヴィチ族：ベラルーシの地に生きた東スラヴの一派

ドレゴヴィチ族は、9世紀から12世紀にかけて、現在のベラルーシのホメリ州、ヴィーツェプスク州、フロドナ州、ミンスク州一帯に居住していた東スラヴ民族の連合体です。その名は、古東スラヴ語で沼を意味する「дрегва」（もしくは「дрягва」）に由来すると考えられています。現代ベラルーシ語では「дрыгва」が湿原を意味することからも、彼らの居住地が湿地帯であったことが伺えます。

歴史と居住地

ドレゴヴィチ族は、南からネマン川に向かって移動してきたと考えられており、その起源は南方にあったと推測されています。彼らの居住地の周辺には、東にラジミチ族、北東にクリヴィチ族、南にドレヴリャーネ族、北西にヤトヴャグ族とリトヴァ族が居住していました。

ビザンツ帝国のコンスタンティノス7世は、著書の中でドレゴヴィチ族を「δρουγουβίται（droygoybitai）」という名で言及し、ルーシに所属する部族として記述しています。また、ルーシの年代記には、ドレゴヴィチ族がかつて公国を形成しており、その首都がトゥーロフであったという記述が残されています。

10世紀頃、ドレゴヴィチ族はキエフ大公国に従属したと考えられています。その後、彼らの勢力圏にはトゥーロフ公国が形成されましたが、北西部はポロツク公国の一部となりました。

文化と特徴

9世紀から10世紀にかけてのドレゴヴィチ族の遺跡からは、農業を営んでいた集落や、火葬された遺体を埋葬したクルガン（墳墓）、そして小さな城市などが発見されています。民族性を特徴づける出土品としては、粒状の模様で覆われた大粒の金属製ビーズが挙げられます。

ドレゴヴィチ族は、その名前が示すように湿地帯を生活の基盤とし、農業を営みながら独自の文化を育んでいきました。彼らは、周辺の民族との交流やキエフ大公国の影響を受けつつも、独自のアイデンティティを保持し、ベラルーシの歴史に深く根ざした存在として記憶されています。

まとめ

ドレゴヴィチ族は、現在のベラルーシに居住していた東スラヴ民族の一派であり、湿地帯での生活に適応しながら独自の文化を築き上げました。彼らの歴史は、ベラルーシの歴史を理解する上で重要な要素の一つであり、今後の研究によって更なる詳細が解明されることが期待されます。

参考文献
Энциклопедический словарь Брокгауза и Ефрона
和田春樹編 『ロシア史』（世界各国史22）、山川出版社、2002年。

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