クリヴィチ族

クリヴィチ族：東スラヴの歴史を彩る部族連合体

クリヴィチ族は、6世紀から10世紀にかけて、東スラヴ民族の部族連合体として、現在のベラルーシを中心とした地域に存在しました。彼らは、ルーシの年代記にもその名が記されており、その歴史は深く探求されています。

起源：二つの説

クリヴィチ族の起源には、大きく分けて二つの説があります。

カルパチア山脈起源説
年代記に基づき、クリヴィチ族がドレヴリャーネ族、ポリャーネ族、ドレゴヴィチ族と共に、白クロアチア族、セルビア人、ホルタネ族の一部として、6世紀から7世紀にドニプロ川上流へ移動し、ベラルーシ地域に定住したという説です。
ポーランド北部起源説
言語学の研究に基づき、ノヴゴロドの白樺文書と古クリヴィチ族方言がスラヴ語北西方言グループに属していることから、ポーランド北部を発祥の地とする説です。

クリヴィチという名称の由来についても、様々な説があります。クリヴィチ族の先祖の名、バルト人の祭司長クリヴェ、あるいは血縁者や隻眼の・丘の多いといった言葉に由来するという説が存在します。

歴史：キエフ大公国への組み込みとその後

スラヴ民族の移住は一度きりではなく、数世紀にわたって継続しました。8世紀から9世紀には、スラヴ民族はバルト地域への大規模な移住を開始し、ドニプロ川右岸の支流であるベレジナ川流域からソジ川流域にかけての地域に移住・定住しました。

クリヴィチ族は、北部クリヴィチ族、西部クリヴィチ族、南部クリヴィチ族に分かれ、それぞれノヴゴロド・ルーシ、ポロツク、スモレンスクを建設しました。これらのクリヴィチ族は、リューリクの後継者オレグの時代には既にキエフ大公国に組み込まれていました。

キエフ大公国の形成後、クリヴィチ族はヴャチチ族と同じく、東方への殖民に積極的に参加し、ロシア各地へ移住しました。彼らは、ディヤコヴスカヤ文化を持つフィン人の部族と同化、あるいは駆逐したと考えられています。

『イパーチー年代記』におけるクリヴィチ族に関する最後の言及は1128年の記述ですが、1140年、1162年の記述では、ポロツク公を「クリヴィチ族による」と表記しています。クリヴィチという部族名は、17世紀末に至るまで、ロシア外の史料に使用されていました。

文化：特徴的な埋葬様式と遺物

クリヴィチ族は、土塁状の土堤を備えた長形のクルガンを墓陵として築き、遺体は火葬していました。これは彼らの文化的な特徴の一つです。

その他、ナイフ、槍の穂先、鎌、銅製・三日月形のもみあげに飾る装飾品（ヴィソチノエ・コリツォ）、ガラス製のビーズ、ろくろで製作した陶器製の壺などが発見されています。これらの遺物は、当時のクリヴィチ族の生活や文化を垣間見ることができる貴重な資料です。

現代への影響：ベラルーシ民族の祖

クリヴィチ族は、ドレゴヴィチ族、ラジミチ族等と融合し、現在のベラルーシ民族の祖となったと考えられています。彼らの歴史と文化は、現代のベラルーシにも深く根付いています。

ラトビア語でロシア人を指す言葉はkrievi、ラトガリア語ではkrīviと表記しますが、これもクリヴィチ族の名残であると考えられます。

クリヴィチ族は、東スラヴの歴史において重要な役割を果たした部族連合体であり、その歴史と文化は、現代においても様々な形で影響を与えています。

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