ドレパナ沖の海戦

ドレパナ沖の海戦

ドレパナ沖の海戦は、第一次ポエニ戦争中の紀元前249年に、シチリア島西部のドレパナ（現在のトラーパニ）沖で、共和政ローマとカルタゴの間で行われた海戦です。ローマはこの戦いで大敗を喫し、地中海の覇権をめぐる争いは激化しました。

背景

ミラエ沖やエクノモス岬沖での勝利により、ローマ海軍は自信を深め、ハミルカルが守るカルタゴの重要拠点、リルバイウム（現在のマルサーラ）への直接攻撃を計画しました。執政官プブリウス・クラウディウス・プルケルとルキウス・ユニウス・プッルスは艦隊を率いてリルバイウムを海上封鎖しますが、カルタゴ海軍の機動性は依然として高く、ハンニバル率いる小戦隊が封鎖を突破し、守備兵への補給に成功します。さらに、カルタゴ軍は同様の作戦を繰り返し、ローマ軍の封鎖は効果を発揮しませんでした。そこで、ローディアンのハンニバルと呼ばれる水兵がローマ艦隊の偵察を行い、情報をカルタゴに伝えました。

戦闘の経過

プルケルは大胆にも、敵艦が停泊するドレパナ港への奇襲攻撃を計画します。月明かりのない夜、艦隊はリルバイウムを出港しますが、視界不良のため隊列を組むことができません。夜明けにドレパナに到着したときには、艦隊は広範囲に散らばっていました。カルタゴの偵察部隊はローマ艦隊を確認し、奇襲は失敗に終わります。

戦闘前、プルケルは聖なる鶏に吉兆を占わせますが、鶏は穀物を食べませんでした。これは不吉な兆候とされましたが、プルケルは鶏を海に投げ入れ、「食べたくなければ飲ませようではないか」と言い放ったと伝えられています。

カルタゴの艦隊司令官アドヘルバルは、ローマ艦隊の動きを見て、直ちに艦隊を港から脱出させます。カルタゴ艦隊はドレパナを出港し、街の南側を回って外海に出ます。奇襲が失敗したことを悟ったプルケルは、戦闘隊形を命じますが、シチリアの海岸線がローマ艦隊の背後に迫り、カルタゴ艦隊は正面から攻撃を仕掛ける有利な状況となります。アドヘルバルは好機を逃さず、右翼戦隊にローマ艦隊の最後尾を攻撃させ、ローマ艦隊は大敗を喫しました。

戦後

プルケルはローマに帰還後、反逆罪で告訴されます。カルタゴとは異なり、ローマはプルケルを処刑しませんでしたが、彼は鶏の一件で神聖を汚したとして有罪判決を受け、国外追放となります。また、同年にはハミルカル・バルカがシチリアで軍事作戦を成功させ、もう一人の執政官ルキウス・ユニウス・プッルスが率いるローマ艦隊が嵐で沈没するという悲劇も重なり、ローマはドレパナでの敗北から立ち直るまでに7年を要しました。

ドレパナ沖の海戦は、第一次ポエニ戦争におけるカルタゴの重要な勝利であり、ローマ海軍に大きな打撃を与えました。また、プルケルの不敬な行為は、ローマ社会に衝撃を与え、彼の政治生命を終わらせました。

参考文献

The Fall of Carthage, by Adrian Goldsworthy, Cassel
The Rise of the Roman Empire, by Polybius

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