ドロシア・ジェイムソン

ドロシア・ジェイムソン：色覚研究における先駆者

ドロシア・ジェイムソン（1920年11月16日 - 1998年4月12日）は、20世紀後半における認知心理学、特に視覚と色覚研究において重要な貢献を果たしたアメリカ人心理学者です。その業績は、夫であり同じく心理学者のレオ・ハーヴィッチとの共同研究によって大きく花開きました。

初期のキャリアと出会い

マサチューセッツ州ニュートン生まれのジェイムソンは、ウェルズリー大学に入学。1年生の時に心理学を専攻することを選択したきっかけは、「新入生の入学許可の特別さが興味深かった」ことだったと伝えられています。1942年に同大学を卒業後、ハーバード大学で研究助手としてボランティア活動を始めます。この活動を通じて、後の夫となるレオ・ハーヴィッチと出会いました。2人は1948年に結婚、その後も研究における協力関係を長く続けました。

第二次世界大戦と視覚研究への貢献

ジェイムソンはウェルズリー大学在学中からハーバード大学で研究活動に携わり、第二次世界大戦中に使用されていた視覚距離計の精度向上に貢献しました。戦後もハーバード大学で視覚研究を続け、イーストマン・コダック社の色彩管理部門責任者であったラルフ・エバンスの招聘を受け、視覚知覚に関する研究に本格的に取り組みます。エバンスは、3次元空間と写真における色の理解には知覚プロセスの解明が不可欠だと認識しており、ジェイムソンはその研究に最適な人材だったと言えるでしょう。

反対色過程理論への貢献

1957年、ジェイムソンはハーヴィッチと共に、エヴァルト・ヘリングの反対色説に定量的なデータを提供する画期的な研究成果を発表しました。この研究で用いられたのが「色相キャンセレーション法」です。これは、ある色（例えば黄色）から始めて、その色の成分の痕跡を消すために、反対色（例えば青）をどれだけ加える必要があるかを測定するという方法です。この実験は、反対色過程理論を裏付ける強力な証拠となり、色覚研究に大きな進歩をもたらしました。

ペンシルバニア大学教授時代とその後

ジェイムソンは1972年にペンシルバニア大学の教授に任命され、研究活動を続けました。1972年にはペンシルバニア大学、1989年にはニューヨーク州立大学から名誉学位を授与されるなど、その研究業績は高く評価されました。しかし1998年4月12日、それまで診断されていなかった肺癌により急逝しました。夫のハーヴィッチも2009年にニューヨークで亡くなりました。

受賞歴

ジェイムソンは数々の賞を受賞しており、その多くは夫ハーヴィッチとの共同受賞です。主な受賞歴は以下の通りです。

1963年：アメリカ光学会フェロー
1971年：ハーヴィッチと共に実験心理学会からハワード・クロスビー・ウォーレンメダル受賞
1972年：ハーヴィッチと共にアメリカ心理学会からAPA賞受賞
1982年：ハーヴィッチと共にアメリカ光学会からエドガー・D・ティリヤー賞受賞
1985年：ハーヴィッチと共に国際色彩学会からジャッド賞受賞
1987年：認知神経科学研究所のヘルマン・フォン・ヘルムホルツ賞受賞

ジェイムソンとハーヴィッチの研究は、色覚の理解を深め、後の研究者たちに大きな影響を与えました。彼らの功績は、現代の色覚研究においても依然として重要な位置を占めています。

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