ドン・フアン・デ・アウストリア

ドン・フアン・デ・アウストリア：知られざる英雄の生涯

ドン・フアン・デ・アウストリア（1547年 - 1578年）は、神聖ローマ皇帝カール5世の庶子として生まれ、軍人として名を馳せました。異母兄にはスペイン王フェリペ2世がいます。

生い立ち

ドン・フアンは、カール5世とバルバラ・ブロムベルクの間に生まれました。幼少期はヘロニモと呼ばれ、父帝の意向により養育者や執事長の元で育てられました。1557年、カール5世とユステ修道院で初めて面会し、その翌年に父帝が崩御しました。1559年には異母兄フェリペ2世と面会し、翌年、王宮へ呼ばれ庶弟として認知され、「ドン・フアン・デ・アウストリア」を名乗ることを許されました。王族としての地位を得ましたが、「殿下」の称号は与えられませんでした。聖職者の道を拒み、軍人としての人生を選びました。

軍人としての功績

1569年から1570年にかけて、アンダルシアの反乱を鎮圧。1571年には、24歳という若さで神聖同盟軍の総司令官に任命され、レパント海戦でオスマン帝国海軍を打ち破るという歴史的勝利を収めました。しかし、1573年にチュニスのラ・ゴレータ要塞を陥落させた後、フェリペ2世の指示に反して要塞を解体しなかったため、トルコ軍の反撃を招き敗北しました。

ネーデルラント総督と結婚計画

1576年、ネーデルラント総督に就任。当時、ネーデルラントではカトリックとプロテスタントの対立が激化しており、ドン・フアンはイングランドを牽制するため、スコットランド女王メアリ・ステュアートとの結婚を画策しました。この結婚によってスコットランド王位を得ることを望んでいましたが、1578年、ナミュール城塞で軍事行動中に体調を崩し、発疹チフスが原因で死去しました。一説には、痔疾の治療の誤りが原因とも言われています。

その後

遺体はスペインへ運ばれ、エル・エスコリアル修道院に埋葬されました。彼の名は、19世紀末のスペイン海軍の艦船にも受け継がれています。

関連作品

漫画：サラディナーサ - 河惣益巳著
ゲーム：大航海時代V - レパント海戦のエピソードが登場

参考文献

西川和子 『スペインの貴公子 フアンの物語―レパント会戦総司令官の数奇な運命』 彩流社、2007年

関連項目

レパントの海戦

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