ドン・ルイス・デ・ボルボーン親王の家族

ドン・ルイス・デ・ボルボーン親王の家族

フランシスコ・デ・ゴヤが1784年に制作した『ドン・ルイス・デ・ボルボーン親王の家族』は、スペインロマン主義の傑作です。この肖像画は、国王フェリペ5世の息子であるドン・ルイス親王とその家族を描いており、ゴヤの重要な後援者だった親王の姿を通じて当時の文化的背景を示しています。現在この作品は、イタリアのパルマ県にあるマニャーニ・ロッカ財団で保存されています。

作品の背景

ドン・ルイス親王は1727年に誕生し、聖職者としての地位を放棄した後、チンチョン伯爵の称号を受けました。親王は、サラゴサのマリア・テレサと結婚し、貴賤結婚という理由から、マドリードを離れアレナス・デ・サン・ペドロに新しいモスケラ宮殿を建設しました。彼は当時の著名な画家や作曲家を招待し、この地で文化的な繁栄をもたらしました。

ゴヤは1783年にドルス・ルイス親王と出会い、彼の支援を受けながら多くの肖像画を制作しました。『ドン・ルイス・デ・ボルボーン親王の家族』もその中の1つであり、同年に開始された一連の肖像画の完成版として1770年代のスペインにおける集団肖像画の先駆けとなります。

描かれた人物

この肖像画には、ドン・ルイス親王を中心に14人の人物が描かれています。画面中央には、親王の妻であるマリア・テレサが描かれており、彼女は美容師に髪の手入れを受けている姿で、鑑賞者に穏やかな視線を向けています。ドン・ルイス親王は彼女の横に座り、トランプ遊びに興じている様子が描かれています。周囲には彼らの子供たちや側近、使用人が立っており、場面は家族の親密さを感じさせますが、当時の記録には彼らの名前が残っていません。

作品の特徴と分析

この作品には、非公式な儀礼を感じさせる様々な要素が散りばめられています。構図には暗いカーテンが画面を囲い、中央のマリア・テレサが目を引くように配置されています。彼女の穏やかさと、親王のトランプ遊びは、彼の立身出世や家庭の雰囲気を象徴していると考えられます。

特にトランプ遊びは、ヨーロッパの美術において時に「怠惰」を象徴することがあります。親王の背景を考えると、彼の地位や家族のことを象徴する意味合いを持つと解釈できます。テーブル上の銀の燭台は、作品の唯一の光源であるだけでなく、親王の個人的な趣味に触れる象徴でもあるでしょう。

来歴

完成後、この肖像画はアレナス・デ・サン・ペドロのモスケラ宮殿に保管されます。その後、親王の娘である第15代チンチョン女伯爵に引き継がれ、様々な所有者を経て、最終的にはルイジ・マニャーニによって購入されました。作品はゴヤの優れた技術と、当時のスペインの社会を映し出す貴重なアートとして広く評価されています。

このように『ドン・ルイス・デ・ボルボーン親王の家族』は、当時の文化や人物生活を反映した重要な集団肖像画であり、ゴヤの代表作の一つとして今日に至るまで多くの人々に愛されています。

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