ドーベントンコウモリ

ドーベントンコウモリ：水辺を舞う小さなハンター

ドーベントンコウモリ（学名：Myotis daubentonii、広義）は、ヨーロッパから西アジア、そして東アジアにまで広く生息する、ヒナコウモリ科に属する小型のコウモリです。かつては、東アジアの個体群もこの種に含めていましたが、2005年以降、東アジアの個体群を別種(Myotis petax)とする分類が提唱され、現在も議論が続いています。IUCNレッドリストでは、狭義のM. daubentonii（ヨーロッパドーベントンコウモリ）を対象としていますが、本稿では、従来の広義のドーベントンコウモリ（M. daubentoniiとM. petaxを含む）について解説します。

形態

体長は4～6cmと小型で、尾の長さは2.5～5cm、体重は5～15gほどです。灰色の飛行膜を持ち、腹側は若干色が淡くなります。特徴的なのは、翼がやや湾曲している点です。この湾曲した翼は、水面すれすれの飛行や、巧みな捕食行動に役立っていると考えられています。

生息環境と生態

ドーベントンコウモリは、森林、湿地帯、湖沼、池、人工湖、低湿地、沢、湿原など、水辺環境を好んで生息します。夜行性で、水面から1～2mの高さで飛行しながら、口や翼、尾膜を使って飛行中の昆虫を巧みに捕食します。さらに、驚くべきことに、水面をすくい取るようにして小さな魚を捕らえることもあるという報告もあります。日中は、樹洞、建造物、古い壁、橋の下など、様々な場所で休息します。冬眠のためには、洞窟や坑道といった場所まで、場合によっては300km以上も移動することも知られています。

分布

その分布域は非常に広く、ヨーロッパ全域から西アジア、そして東アジアにまで及びます。日本にも生息しており、日本の水辺環境において重要な役割を担っていると考えられています。しかし、生息環境の悪化や、人間の活動による影響なども懸念されています。

保全状況

具体的な個体数や、生息状況の詳細は、分類の見直しや、調査の不足により、まだ十分に解明されているとは言えません。生息地の保全、環境汚染の抑制、さらなる調査研究が、この小さな水辺のハンターの未来を守るために不可欠です。

まとめ

ドーベントンコウモリは、その独特の形態と、水辺を巧みに利用した捕食行動で知られる、魅力的なコウモリです。その生態は、未だ謎に包まれた部分も多く、さらなる研究が期待されます。私たち人間も、この小さな生き物たちが安心して暮らせる環境を守り、未来へとつないでいく責任があります。

参考文献

* デイヴィッド・バーニー、日高敏隆監修　『世界動物大図鑑』 ネコ・パブリッシング、2004年

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