ドールズ (1987年の映画)

ドールズ

『ドールズ』（原題：Dolls）は、1987年に公開されたアメリカ合衆国のホラー映画です。スチュアート・ゴードンが監督を務め、エド・ナーハが脚本を執筆しました。主要な出演者にはスティーヴン・リー、ガイ・ロルフ、ヒラリー・メイソン、イアン・パトリック・ウィリアムズ、バンティ・ベイリーなどが名を連ねています。本作は、チャールズ・バンドとブライアン・ユズナがエンパイア・ピクチャーズを通じてプロデュースした作品です。

物語は、突然の激しい嵐に見舞われ、雨宿りのため偶然たどり着いた古風な邸宅で一夜を過ごすことになった数名の男女を中心に展開します。彼らはその屋敷にいる奇妙な人形たちが、実は罪を犯した人間の魂を封じ込められた存在であり、独自の意志を持って動くことを知るのです。

あらすじ

イギリスの田舎を旅行していた幼いジュディと父親のデヴィッド、そして冷酷な継母ローズマリーの一家は、激しい雷雨に遭遇し、近くにあった古めかしい邸宅に避難します。邸宅の主は、心優しい老夫婦ガブリエルとヒラリーでした。ジュディが大切にしていた人形テディをローズマリーに捨てられたことを知ったガブリエルは、彼女にMr.パンチ人形をプレゼントします。

時を同じくして、嵐から逃れるため邸宅にやってきた人々がいました。気さくなアメリカ人ビジネスマンのラルフと、彼にヒッチハイクで便乗していたイギリス人ヒッチハイカーのイザベルとイーニッドです。ハートウィック夫妻は彼ら全員にも一夜の宿を提供します。

屋敷内には精巧で美しい人形やおもちゃが数多くあり、ジュディはすぐに夢中になります。ガブリエルは自身がおもちゃ職人であることを明かし、おもちゃを心から愛する童心を持った大人のラルフもまた、屋敷の雰囲気を喜びます。しかし、イザベルとイーニッドは実は泥棒であり、ラルフを騙して金品を奪おうと企んでいました。

その夜、イザベルは盗み目的で自室を抜け出しますが、生命を得たかのように動き出した人形たちに襲撃され、命を落とします。偶然その様子を目撃したジュディは父に助けを求めますが、娘を信じないデヴィッドとローズマリーは彼女を嘘つき扱いします。代わりにジュディはラルフを説得し、共に廊下に向かいます。最初は半信半疑だったラルフですが、ジュディのMr.パンチ人形が話し始めたことで、ジュディの言葉を信じるようになります。

ローズマリーもまた人形たちに襲われ、逃げる際に窓から転落して死亡します。イザベルを探していたイーニッドは、無残にも人形の姿に変えられてしまったイザベルを発見します。恐怖で逃げようとするイーニッドにも、人形の大群が襲いかかり彼女を殺害します。

人形たちの手から逃れたジュディとラルフは工房に入りますが、怒り狂ったデヴィッドに見つかります。ラルフは人形の攻撃について説明しようとしますが、聞く耳を持たないデヴィッドは二人を殴って気絶させます。そこにMr.パンチ人形が再び動き出し、デヴィッドを攻撃。他の人形たちも介入し、気絶した二人を安全な場所へ運びます。激しい戦いの末、Mr.パンチはデヴィッドに破壊されてしまいます。

そこに現れたハートウィック夫妻は、自らが魔法使いであり、子供たちの純粋な心を大切にすることを重んじていると明かします。彼らの屋敷に避難してきた人々は人形たちによって試され、ラルフやジュディのように童心を理解し、純粋な心を持つ者は助かり、より豊かな人生を送ることになる。一方、デヴィッド、ローズマリー、イザベル、イーニッドのように、悪意や貪欲さ、無関心さといった大人の苦々しさを抱え、変わろうとしない者は、屋敷から出ることはできず、永遠におもちゃとして新しい役割を演じることになるのだと告げます。その言葉を聞き入れないデヴィッドは、Mr.パンチの代わりにゆっくりと人形へと変貌していきます。

翌朝、目覚めたラルフとジュディは、昨晩の出来事は夢だったとハートウィック夫妻に諭されます。ガブリエルは、デヴィッドからの手紙として、彼とローズマリーが名前を変えてイーニッド、イザベルと共に国外へ行ったと説明します。そして、ジュディがボストンの思いやり深い母親と暮らせるように、デヴィッドが飛行機のチケット代を残したと伝えます。屋敷を後にするラルフとジュディは、ジュディがラルフに新しい父親になってほしいとほのめかす場面で終わります。屋敷の棚には、デヴィッドたちの人形が並べられ、次の犠牲者となるかのような粗野な親子を乗せた車が、近くで立ち往生する様子が映し出されます。

製作と反響

本作は200万ドルの製作費に対し、350万ドルの興行収入を記録しました。批評家からの評価は賛否が分かれています。Rotten Tomatoesでは肯定的な評価が60%、Metacriticでは「賛否両論または平均的」とされるスコアとなりました。エイント・イット・クール・ニュースは本作を「この主題で、この時代に期待できるタイプの映画よりもはるかに優れている」と評しましたが、ロジャー・イーバートは「アイデア止まり」としつつも「見栄えが良い」「壮大なお化け屋敷である」と認めるなど、評価は割れました。HorrorNews.netはハートウィック夫妻をホラー映画史上の優れたカップルとして挙げ、ガブリエルを「最も不気味なおもちゃ職人」と称しています。オールムービーは「愛情込めて作られた現代のおとぎ話」として、低予算による粗さがなければ古典になり得たと評価しています。

スチュアート・ゴードン監督は続編の監督に興味を示し、ジュディとラルフがボストンに戻った後、おもちゃ職人夫妻が人形として現れるという初稿が存在しましたが、企画は実現しませんでした。

映像メディア

日本では、1988年4月6日にポニーキャニオンからVHSが発売されたのを皮切りに、2004年10月29日には東宝から発売されたDVD-BOX「FANTASTIC! BOX」に収録されました。その後、2013年8月2日にはハピネットよりBlu-ray版が発売されています。

本作は、人形が襲いかかるというオーソドックスなホラーの要素に、童心と大人の対比、そしてモラルの寓話といったテーマを盛り込んだ異色の作品として、現在でもカルト的な支持を得ています。

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