ナイジェル・ファラージ

ナイジェル・ファラージ

ナイジェル・ポール・ファラージ氏は、1964年4月3日生まれのイギリスの政治家です。長年にわたり、イギリスの欧州連合（EU）からの離脱と国家主権の回復を訴え続け、欧州懐疑主義運動の最前線に立ってきました。現在はリフォームUKの党首を務めています。2024年には、8回目の挑戦にして初めて庶民院議員に当選しました。

ケント州に生まれたファラージ氏は、学生時代に古典的自由主義に影響を受け、保守党に入党。政治活動に関心を持つようになります。大学へは進学せず、ロンドンの金融街で商品先物取引の仲介業に従事しました。この間、交通事故や癌といった深刻な健康問題を経験しましたが、いずれも乗り越えています。私生活では二度の結婚を経験し、家族を持っています。

既存政党のEUに対する姿勢に不満を抱き、特にマーストリヒト条約への署名に反対して1992年に保守党を離党。翌年にはイギリス独立党（UKIP）の設立に参画しました。初期は国政選挙での当選に至りませんでしたが、1999年から2019年まで5期にわたり欧州議会議員を務めました。欧州議会では、EUの官僚機構や首脳陣に対する率直で時には辛辣な批判を繰り返し、その様子はインターネットを通じて広く拡散され、彼の知名度と影響力を高める大きな要因となりました。

2006年にUKIP党首に就任すると、ブレグジット（イギリスのEU離脱）を党の核となる政策として掲げ、党勢を飛躍的に拡大させました。厳格な移民規制も訴え、賛否両論を巻き込みながらも、UKIPをイギリス政治における主要なプレイヤーへと押し上げました。2014年の欧州議会選挙では、UKIPが保守党や労働党を上回る得票数で第1党となり、これはイギリスの二大政党制に慣れた政界に大きな衝撃を与えました。このUKIPの躍進が、当時のデーヴィッド・キャメロン首相にEU残留か離脱かを問う国民投票の実施を約束させる直接的なきっかけとなりました。

2016年のEU離脱を問う国民投票では、「Leave」キャンペーンの顔として精力的に活動し、ブレグジット実現に決定的な貢献を果たしました。国民投票で離脱派が勝利した後、ファラージ氏は党首を辞任しましたが、その政治的な影響力は衰えませんでした。その後UKIPの方向性に異議を唱え、2019年にはブレグジット党を結成。同年の欧州議会選挙で再び地滑り的な勝利を収めました。

2020年には党名をリフォームUKに改称。特に新型コロナウイルスのパンデミック対策における政府のロックダウン措置に対し、「治療は病気よりも更に悪い」と批判的な姿勢を取り、経済活動や個人の自由を過度に制限すべきではないと主張しました。長年の国政選挙での挑戦を経て、2024年7月の総選挙でついに庶民院議員として初当選を果たし、再びイギリス政治の中心舞台に戻りました。近年は、ドナルド・トランプやイーロン・マスクといった国際的な著名人との関係も注目されています。

彼の政策・主張は、経済における自由市場と低税率の重視、EUからの完全な離脱と主権回復、厳格な移民規制（特に無制限な入国反対、オーストラリア式の移民政策提唱）、環境問題への懐疑的な見解、NHS改革の必要性（移民増加による財源逼迫を指摘）、個人的自由の尊重（ドラッグ・公共の場での喫煙規制反対）、そして自国優先の外交姿勢などが挙げられます。

カリスマ性とユーモアを兼ね備えた演説スタイルは彼の大きな特徴であり、聴衆を惹きつける能力に長けています。特に欧州議会でのEU首脳に対する直接的な批判は、彼の政治家としてのイメージを強く印象づけました。私生活では、クリケットを愛好し、喫煙やビールを好む人物としても知られています。

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