ナイル・キニック

ナイル・キニック・ジュニア：伝説のアメリカンフットボール選手、その生涯と功績

ナイル・キニック・ジュニア（Nile Clarke Kinnick, Jr.、1918年7月9日 - 1943年6月2日）は、アメリカ合衆国アイオワ州出身のアメリカンフットボール選手。小柄ながらも傑出した才能を発揮し、アイオワ大学在学中の1939年には、カレッジフットボール最高の栄誉であるハイズマン賞を受賞しました。しかし、第二次世界大戦が勃発するとアメリカ海軍のパイロットとなり、訓練飛行中の事故により24歳という若さでその生涯を閉じました。彼の死後、その功績を称えられ、カレッジフットボール殿堂入り、アイオワ大学のスタジアムはキニック・スタジアムと改称されました。

生い立ちと背景

ナイル・キニックは、ナイル・キニック・シニアとフランシス・クラークの間に生まれました。彼の家系は、アメリカ独立戦争で活躍したナサニエル・グリーンの遠い親戚にあたり、母方の祖父であるジョージ・クラークは、アイオワ大学卒業後にアイオワ州知事を務めた人物でした。教育熱心な両親のもと、彼は幼い頃から規律、勤勉さ、高い道徳心を培い、自己改善を追求する姿勢を身につけました。スポーツにも親しみ、後にMLBで殿堂入りを果たすボブ・フェラーと野球をしたこともありました。中学時代には、アメリカンフットボールとバスケットボールで中心選手として活躍しました。

大学時代：どん底からの飛躍

高校卒業後、彼は当初ミネソタ大学への進学も検討しましたが、最終的にアイオワ大学を選びました。当時、アイオワ大学のアメリカンフットボールチームは低迷期にありましたが、彼はその状況に挑戦することを選びました。1年次からチームの中心選手として活躍し、ランとパスでタッチダウンを記録しました。1936年シーズン後、ヘッドコーチが交代し、新たな体制でチームは再出発を図ります。2年次にも彼は奮闘しましたが、チームの成績は低迷したままでした。しかし、彼の才能は周囲から高く評価され、カンファレンスのベストメンバーに選出されました。1937年、チームはビッグ・テン・カンファレンスで全敗しましたが、彼は74ヤードのパントリターンタッチダウンを記録するなど、個人としては目覚ましい活躍を見せました。また、バスケットボールでもチームの得点源として貢献しました。3年生となる1938年のシーズン前には足首を故障しましたが、痛みをこらえてプレーを続けました。

1939年：ハイズマン賞受賞

1939年シーズン、彼は並々ならぬ決意で臨みました。新ヘッドコーチであるエディー・アンダーソンは、彼の才能を高く評価し、チームは「鉄人たち」と呼ばれるほどに結束力を高めました。キニックはクォーターバックとして、パス、ラン、キックオフリターン、インターセプトなど、あらゆる面で傑出した能力を発揮し、チームを6勝1敗1分という好成績に導きました。特に、ノートルダム大学との試合では、タッチダウンとドロップキックによるエクストラポイントでチームの全得点を挙げ、勝利に大きく貢献しました。シーズン終了後、彼はカレッジフットボールのオールアメリカンファーストチームに選ばれ、ハイズマン賞、ウォルター・キャンプ賞、マクスウェル賞など、数々の賞を受賞しました。

海軍入隊と早すぎる死

大学卒業後、彼はロースクールに進学し、法学を学びながらフットボールチームのアシスタントコーチも務めました。しかし、1941年8月、彼は海軍航空隊に入隊することを決意しました。戦闘機のパイロットとしての訓練を受けた後、空母レキシントンに配属されました。1943年6月2日、訓練飛行中に彼の搭乗するグラマンF4Fワイルドキャットがベネズエラのパリア湾沿岸に墜落し、24歳という若さで殉職しました。彼の遺体は発見されませんでした。

死後の栄誉

彼の死後、その功績を称えられ、数々の栄誉が贈られました。カレッジフットボール殿堂入り、アイオワ大学のスタジアムはキニック・スタジアムと改称されました。また、ビッグ・テン・カンファレンスのフットボールゲームでは、彼の姿が描かれたコインによるコイントスが行われるようになりました。アイオワ大学では、彼を讃える基金が設立され、優秀な学生アスリートへの奨学金が毎年授与されています。

ナイル・キニック・ジュニアは、卓越した才能と不屈の精神で、アメリカンフットボール界に輝かしい足跡を残しました。彼の英雄的な生涯は、今もなお多くの人々に感銘を与え続けています。

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