ナガミヒナゲシ

ナガミヒナゲシ（長実雛芥子）

ナガミヒナゲシ（Papaver dubium L.）は、ケシ科の一年草または越年生植物です。地中海沿岸を原産とし、ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア、オセアニア、南北アメリカ、そして日本へと分布を広げています。

特徴

яркость オレンジ色の花を咲かせます。花弁は基本的に4枚ですが、多少の変動が見られます。開花時期は4月から5月にかけてです。草丈は15cmから最大60cm程度まで生長し、茎には硬い剛毛が生えています。葉は細かく切れ込んでいます。

果実は細長く、この特徴が和名の由来となっています。果実の中には、文字通り芥子粒ほどの大きさの種子が大量に入っています（種子1粒の大きさは約0.6mm×0.7mm、重さは約0.13mg）。果実が熟して乾燥すると、柱頭との間に隙間ができ、風によって種子が散布されます（風靡散布）。

梅雨時には、非常に小さな灰黒色の種子を大量に生成します。一つの果実には約1600粒もの種子が含まれており、1個体あたり100個の果実をつけることもあるため、多い個体では15万粒もの種子を持つことになります。種子の表面には凹凸があり、未熟な状態でも発芽することができ、結実から5年を経過した種子でも発芽能力を保持しています。種子は秋に発芽してロゼット状で越冬するものと、翌春に発芽するものがあります。発芽に適した温度は7℃から25℃と幅広く、特に気温の低下が発芽を促進します。

茎を切ると、黄色または乳白色の乳液が出てきます。根と葉からは、周辺の植物の生育を阻害する物質が分泌されます（アレロパシー）。

外来植物の雑草化リスク評価では、特定外来生物に匹敵するか、それ以上の高いリスクが指摘されていますが、現在のところ特定外来生物には指定されていません。海外では、コムギ畑などの秋播き作物への侵入が問題となっています。

ナガミヒナゲシは、他のヒナゲシと同様に、阿片の原料となるアルカロイドを含んでいないとされており、あへん法による規制対象ではありません。ただし、同法で栽培が禁止されているケシとの交配の可能性も指摘されています。

亜種として、subsp. lecoqiiとsubsp. dubiumの2種類が存在します。これらの亜種は、花の見た目や開花時期、茎内の乳液の色などが異なりますが、日本の図鑑などでは区別されずに、どちらもナガミヒナゲシとして扱われています。

花言葉は「平静」「慰め」「癒やし」です。

日本における植生と雑草化

日本では帰化植物として自生しており、輸入穀物などに紛れて侵入したと考えられています。1961年に東京都世田谷区で初めて確認され、その後、群馬県、福岡県などにも分布が拡大し、2000年以降には全国へ爆発的に распространяется. 2007年には青森県と沖縄県を除く日本全国で繁殖が確認されています。

当初は幹線道路沿いでの発生が目立ちましたが、2011年には農地への繁殖も確認されています。埼玉県、千葉県、神奈川県、京都府、東京都など、複数の自治体では、ナガミヒナゲシを「生態系に大きな影響を与える外来植物」として危険性を周知し、駆除への協力を呼びかけています。

しかし、周知が十分でない面もあり、「花が綺麗だから」という理由で駆除せずに残してしまう人も少なくありません。都市部では、路傍や植え込みなどで大繁殖している様子がよく見られます。コンクリートの隙間からも生育が確認されており、アルカリ性土壌を好むという説もありますが、国立環境研究所は、ナガミヒナゲシが土壌の種類を選ばず、温暖で日当たりの良い乾いた肥沃地を好むとしています。農業環境技術研究所の藤井義晴氏は、道路沿いにできた種子が雨で濡れた車のタイヤに付着して運ばれることで、分布が拡大していると推測しています。

日本では、年度変わりの5月頃に除草作業が行われることが多いですが、この頃には既にほとんどの株が結実を終え枯死しているため、なかなか減少しません。むしろ、除草機の振動によって種子が周囲に撒き散らされ、翌春には前年よりも増加しているというケースも多く見られます。ナガミヒナゲシの蔓延を防ぐには、花が咲く前のロゼット状態の時期に駆除することが重要です。

一つの果実から1000〜2000もの種子が散布されるため、爆発的な繁殖力を持っています。そのため、園芸花として楽しむ場合は、花が終わったら摘み取るなど、種子の拡散を防ぐ対策が必要です。

参考文献

吉田光司、金澤弓子、鈴木貢次郎、根本正之「種子発芽特性からみたナガミヒナゲシの日本の生育地」『雑草研究』第54巻第2号、日本雑草学会、2009年、63-70頁、doi:10.3719/weed.54.63、ISSN 0372-798X。

関連項目

ヒナゲシ（虞美人草）
ユウゲショウ
コマツヨイグサ
セイタカアワダチソウ
オオキンケイギク
外来生物法

外部リンク

春に気をつける外来植物：ながみひなげし - 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
ナガミヒナゲシ - 国立環境研究所 侵入生物DB
ナガミヒナゲシ （野草雑記）

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