ナクム

ナクム（Nakum）

ナクムはグアテマラのペテン県東部に位置する古代マヤの遺跡であり、南方のヤシュハや東方のナランホと共に、現在はヤシュハ＝ナクム＝ナランホ国立公園の一部として保存されています。この公園は、2006年にはラムサール条約に登録されるほどの重要な自然及び文化的資源として認識されています。

遺跡の特色

ナクムという名はユカテコ語で「ヒョウタンの家」という意味を持ち、比較的に大型のマヤ遺跡の一つです。遺跡は南北の2つのグループに分かれており、長さ285メートルの舗装された道「サクベ」で結ばれています。特筆すべきは、建造物Aの入口が一般的な持送りアーチではなく、上部が丸くなったアーチ構造で、これがナクムの建築様式の独自性を際立たせています。しかし、最近では南側の入口が完全に崩壊してしまったことが報告されています。

調査の歴史

ナクムの存在が広く知られることとなったのは、1905年にフランスの冒険家モーリス・ド・ペリニ伯爵による発見によってです。彼はこの遺跡の詳細な写真を撮り、その後の考古学的探求へとつながります。1910年には、ピーボディ考古学・民族学博物館による探検が行われ、その重要性が再確認されました。さらに、2006年からはポーランドのヤギェウォ大学が関与し、長期的な発掘調査が実施されています。

特に2011年に発見された建造物15号の未盗掘の墓は注目を集め、約1300年前（7-8世紀）及び約2000年前の支配者の墓が見つかりました。特に2000年前の墓には珍しい女性の支配者が埋葬されていると見られ、マヤ文化での女性の地位や役割に新たな視点を与えています。

ナクムの歴史と役割

ヤギェウォ大学の研究によると、ナクム地域には紀元前1000年頃から人々が定住を始め、紀元前700-500年頃の建造物からは既に支配者層が形成されていたことが明らかになっています。この頃、ナクムでは天文観測が行われていたとも考えられており、古典期の終わりまで重要な都市の一つとして機能していました。

遺跡はオルムル川の河畔に位置し、交易上の重要な役割を果たしていたと推測されます。古典期の終焉が訪れる9世紀には、ほとんどの建物が改造され、さらに新しい建築が追加されました。この改造は、周辺都市の崩壊や新たなイデオロギーの影響を受けた結果であると考えられています。ティカルやナランホの影響を受けて、ナクムは新しい建築スタイルを導入したのかもしれません。

ナクムは、古代マヤ文明のさまざまな面を知る上で貴重な遺跡であり、その調査は今後も続いていくことでしょう。その重要性を再認識し、保護活動を行いながら、さらなる発見を期待したいものです。

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