ナショナルスタジアム (シンガポール)

シンガポール国立競技場の歴史

シンガポール国立競技場は、かつてカラン地区に位置し、1973年から2007年までシンガポールのスポーツと文化の中心でした。このスタジアムは、数々の重要なイベントの舞台となり、シンガポール国民の記憶に深く刻まれています。

開場から閉鎖まで

1973年に開場した国立競技場は、サッカー、陸上競技をはじめとする様々なスポーツイベント、そして国家的な式典や文化的な行事に使用されました。東南アジア競技大会を3度（1973年、1983年、1993年）開催し、シンガポールのスポーツ史において重要な役割を果たしました。また、シンガポール軍隊記念日やシンガポール青年祭の開会式など、国家的な祝典の場としても利用されました。

2005年には、東南アジアサッカー選手権の前身であるタイガーカップの決勝戦が開催され、シンガポール代表がインドネシア代表を破り優勝を飾ったことも、多くのファンにとって忘れられない出来事でしょう。独立記念日式典も、18回にわたりこのスタジアムで開催され、国民の祝祭の象徴でした。

スタジアムの特徴

国立競技場は、8レーンの陸上トラックとサッカー場を中心に、卓球場やウエイトリフティング施設などの設備も備えていました。観客席の下のスペースを有効活用し、多様なスポーツに対応できる設計となっていました。また、4000台以上の車と100台以上のバイクを収容できる駐車場も整備され、大勢の観客を受け入れる体制が整えられていました。

一般市民にも開放されており、トラックはジョギングを楽しむ人々に利用されていました。このように、プロのスポーツイベントから一般の利用まで、幅広いニーズに応えられる多目的施設としての役割を担っていました。

建設の背景と基金

第二次世界大戦後、シンガポールが自治政府を樹立し独立へと向かう中で、国家の象徴となるスタジアムの建設が計画されました。1950年代にはカラン公園付近が建設地として選定され、1965年に工事が開始されました。当時の社会問題文化大臣であるOthman Wok氏は、オリンピックを開催できる基準を満たす国立競技場の建設を国家的なプロジェクトとして推進しました。

スタジアム建設の資金は、国営の宝くじ会社であるSingapore Poolsが設立した基金によって多くが賄われました。Singapore Poolsは、1968年から1976年にかけて約1450万シンガポールドルを寄付し、スタジアムの建設と運営を支援しました。

建設の過程

1966年12月7日にOthman Wok社会問題文化大臣によって起工され、最初の3年半は地ならしと杭打ちが行われました。天候の影響で工期が遅れることもありましたが、1970年末までにスタジアムの大部分が完成し、その姿を現し始めました。1973年6月末には、30万個のセメント袋、300万個のレンガ、4500トンの鉄鋼と木材が使用され、スタジアムが完成しました。

再開発と閉鎖

2008年4月から、国立競技場の取り壊しが始まり、跡地には多目的総合スポーツ・娯楽施設であるSingapore Sports Hubが建設されました。2007年6月30日には、閉鎖式典「Field of Dreams – A Tribute to the National Stadium」が開催され、多くの人々がスタジアムに別れを告げました。

閉鎖式典では、シンガポールの過去と現在のアスリートや、S・R・ナザン大統領、議員、閣僚などが参加し、最後のイベントとして、サッカーの試合も行われました。この試合は、東南アジアサッカー選手権を制したシンガポール代表とオーストラリア代表の間で行われ、3-0でオーストラリアが勝利しました。しかし、この試合がスタジアムでの最後の試合ではなく、2007年11月9日には、2010 FIFAワールドカップ・アジア予選の試合も行われました。

年代記録

1966年12月：建設開始。総工費5000万シンガポールドル。
1971年6月4日：ベンジャミン・ヘンリー・シアーズ大統領が完成前のスタジアムを視察。
1973年6月17日：初のイベントとして国際ホッケー大会のエキシビションマッチを開催。
1973年6月24日：最初のサッカー試合としてスルタンゴールドカップ決勝戦を開催。
1973年7月19日：ベンジャミン・ヘンリー・シアーズ大統領によって公式に開場。
1973年9月1日-8日：第7回東南アジア競技大会を開催。
1976年8月9日：初めて独立記念日式典の会場となる。
1983年5月28日-6月6日：第12回東南アジア競技大会を開催。
1984年12月1日-16日：AFCアジアカップ1984を開催。
1986年7月26日：デヴィッド・ボウイの公演を開催。
1986年11月20日：ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世がミサを実施。
1988年5月18日：スティーヴィー・ワンダーの公演を開催。
1989年4月24日-30日：男子プロテニスツアーATPツアートーナメント大会を招致。
1990年3月30日：カルテックスカップでアーセナルが韓国代表と対戦。
1993年3月18日：シンガポール代表が名古屋グランパスエイトと親善試合。
1993年6月12日-20日：第17回東南アジア競技大会を開催。
1993年8月1日：マイケル・ジャクソンの公演を開催。
1996年4月1日：Sリーグの開会式を開催。
1997年9月3日：アジアクラブ選手権でゲイラン・ユナイテッドFCが鹿島アントラーズと対戦。
2001年2月1日：スタジアムで火災が発生。
2001年7月16日：プレミアリーグのリバプールが親善試合。
2001年7月24日：プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドが親善試合。
2002年7月24日：独立記念日式典のメインステージで電気不良による火事を起こす。
2005年1月16日：2004年タイガーカップ決勝戦第2戦を開催。
2006年8月9日：最後の独立記念日式典が開催。
2007年1月31日：東南アジアサッカー選手権決勝戦第1戦を開催。
2007年6月30日：公式の閉鎖式典を開催。
2007年11月9日：2010 FIFAワールドカップ・アジア予選を開催。

シンガポール国立競技場は、41年の歴史の中で、スポーツ、文化、そして国民の祝祭の舞台として、シンガポールの発展とともに歩んできました。その場所は、新たなシンガポールスポーツハブとして生まれ変わり、未来へと受け継がれています。

もう一度検索