ナショナル・ストリング・インストルメント

ナショナル・ストリング・インストルメント・コーポレーション（National String Instrument Corporation）は、リゾネーター・ギターを初めて製造したアメリカのギターメーカーです。1927年に創業し、1942年に倒産しましたが、その後、1989年にナショナル・レゾフォニック・ギター（National Reso-Phonic Guitars）としてその系統が受け継がれました。両社のギターは総称して「ナショナル・ギター」（National Guitars）と呼ばれることがあります。

創業とリゾネーター・ギターの誕生

1925年、ジョン・ドピエラ、ルディ・ドピエラのドピエラ兄弟とジョージ・ビーチャムによって、ナショナル・ストリング・インストルメント・コーポレーションが設立されました。当時、ギタープレイヤーたちは、管楽器に匹敵する大音量のギターを切望していました。その要望に応えるべく、ジョン・ドピエラが考案したのがリゾネーター・ギターです。リゾネーター・ギターは、1920年代から30年代にかけて、ブルース、ハワイアン、ジャズなど、多様なジャンルのギタリストに愛用されました。

苦難の時代と倒産

しかし、ナショナル・ストリング・インストルメント・コーポレーションは、経営上のトラブルに見舞われ、ドピエラ兄弟が会社を離れることになります。兄弟は1928年にドブロ・ギター（Dobro）社を設立し、これがナショナルとの間で利権争いを引き起こしました。さらに、エレクトリックギターの登場も重なり、ナショナル・ストリング・インストルメント・コーポレーションは1942年に倒産という結末を迎えます。

復活、そして現代へ

1988年、ドブロ社のリペア部門に在籍していたドナルド・ヤングとマクレガー・ゲインズの2人が、ナショナル・レゾフォニック・ギター（National Reso-Phonic Guitars, Inc）を立ち上げ、いわゆる「ナショナル・ギター」を復活させました。これにより、ナショナルの伝統は現代に受け継がれています。

ナショナル・ギターと著名ミュージシャン

ナショナル・ギターはその独特な音色と存在感から、多くのミュージシャンに愛されてきました。

ダイアー・ストレイツ：1985年発表のアルバム『ブラザーズ・イン・アームス』のジャケット写真には、マーク・ノップラーが所有する1937年製の「National Resophonic style-0 14 fret」が使用されています。
田端義夫：田端のトレードマークであるサンバースト・ブラウンのエレキギターは、ナショナル社製の「Solid Body Electric Spanish(No.1124)」というモデルです。
ポール・サイモン：『グレイスランド』の歌詞に「The Mississippi delta was shining like a national guitar」（ミシシッピー・デルタはナショナル・ギターのように輝いている）という一節があり、ベストアルバム『グレイテスト・ヒッツ - シャイニング・ライク・ア・ナショナル・ギター』のタイトルにもなっています。

関連情報

スライドギター
スライド奏法

参考文献

トニー・ベーコン『世界で一番美しいアメリカン･ギター大名鑑　ヴィジュアルでたどるヴィンテージ・ギターの歴史』（DU BOOKS、2013年）ISBN 978-4-92506-472-9

外部リンク

National's Histroy（英語）
National Resonator Guitars:An American Tradition

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