ナスタージョ・デリ・オネスティの物語、第二話

サンドロ・ボッティチェッリの「ナスタージョ・デリ・オネスティの物語、第二話」は、1483年にテンペラで板に描かれた作品です。この絵画は、4枚からなる連作の一部であり、元々はフィレンツェのプッチ家のコレクションにありました。1868年に売却された後、連作のうち3枚はスペインのフランシスコ・カンボー氏のコレクションを経て、1941年にマドリードのプラド美術館に寄贈され、現在もそこで展示されています。残る1枚は、プッチ宮に戻っています。

この連作は、アントニオ・プッチが息子のジャンノッツォとルクレツィア・ビーニの結婚式の際に、結婚式場の装飾用としてボッティチェッリに依頼したものです。ボッティチェッリは当時、画家としての絶頂期にありましたが多忙であったため、制作には助手のバルトロメオ・ディ・ジョヴァンニとヤコポ・デル・セッライオも関わっています。特に、最初の3枚はバルトロメオ・ディ・ジョヴァンニが、4枚目はヤコポ・デル・セッライオが担当したと考えられています。

物語の背景は、ジョヴァンニ・ボッカッチョの『デカメロン』に収録された「ナスタージョ・デリ・オネスティの物語」です。これは、愛の成就をテーマにした物語で、パオロ・トラヴェルサーリの娘がナスタージョの求愛を拒否するものの、他の女性が恋人への冷酷さの罪で地獄の罰を受けるのを目撃した後、考えを改めナスタージョと結婚するというものです。

『第二話』では、前作で馬上の騎士と犬に追われる女性を目撃したナスタージョが、騎士からその身の上話を聞く場面が描かれています。騎士は、かつてナスタージョの先祖にあたるグイド・デリ・アナスタージの亡霊でした。グイドもまた、若い女性に求愛を拒絶され、その苦しみの末に自殺したという過去を持っていました。女性は彼の死を悲しむことなく、死後、その無情さゆえに地獄に堕ちます。地獄では、グイドが女性を永遠に追い続けるという罰が与えられます。この追跡は、女性がグイドを無視した期間と同じ年数、毎週金曜日に繰り返されるというもので、女性はグイドに追いつかれる度に殺され、内臓を犬に喰われるという責め苦を受けます。しかし、すぐに蘇り、再び同じ苦痛を味わうのです。この恐ろしい場面が、本作には詳細に描かれています。

ナスタージョは、最初はこの光景に恐怖しますが、やがてこの出来事を利用して、冷淡な恋人を家族と共に招待しようと考えます。この場面は、次の『第三話』で描かれます。

この連作は、単なる結婚式の装飾にとどまらず、愛の残酷さ、地獄の恐ろしさ、そして人の心の変化を描いた、ボッティチェッリの芸術的才能が発揮された作品と言えるでしょう。

作品のポイント

物語性: ボッカッチョの物語を元にした、ドラマチックな展開。
地獄の描写: 恐ろしくも詳細な、地獄の責め苦の描写。
画家の分担: ボッティチェッリの工房の協力による、共同制作。
連作の構成: 物語が連続して描かれる、4枚の連作。
* 寓意性: 愛、拒絶、報復、そして心の変化といった、深いテーマ。

これらの要素が、この作品を単なる絵画にとどまらない、見る者の心に深く残る物語へと昇華させています。

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