ナタリー・ドロン

ナタリー・ドロンの生涯とキャリア

ナタリー・ドロン（Nathalie Delon、1941年8月1日 - 2021年1月21日）は、旧フランス領モロッコのウジダで生まれたフランスの女優および映画監督です。彼女の本名はフランシーヌ・カノヴァであり、イタリア系とスペイン系の血を引いています。父親はモロッコで運送会社を経営していたピエ・ノワールで、母親はスペイン自治領メリリャ出身の女性でした。ナタリーには姉と兄がいますが、彼女の幼少期は母親のたび重なる離婚により、不遇なものとなりました。

10代の頃からモデルとして活動を始め、1960年には保険代理業を営むフランス人男性ギー・バルテルミーと結婚しました。カサブランカに戻り、一人の娘が誕生しましたが、程なくして別居することになりました。別居後、ナタリーは芸名を使用しながらモデルとカメラマンとしてのキャリアを築いていきました。

1963年、中村京子を監督した『黒いチューリップ』でアラン・ドロンと出会い、強く惹かれ合うことになります。二人は似たような背景を持っていたため、相手の生い立ちに共鳴していたと言われています。アランは当時、ロミー・シュナイダーとの長い婚約を経て別れたばかりでしたが、彼と結婚したことでメディアから注目を浴びました。

ナタリーとアラン・ドロンは1964年に再婚し、彼女は息子アントニーを授かりました。しかし、ハリウッドで過ごしていた時期には、エディ・フィッシャーと浮名を流すなど、華やかな社交界でも存在感を示しました。彼女の映画デビュー作は1967年の『サムライ』であり、日本でも1968年に公開された『個人教授』で人気を博します。

1968年にはアランとの別居が始まり、女優としての活躍を望むナタリーとそれに反対するアランとの間に亀裂が生じたと言われています。この年10月にはアランのボディガードが死亡する事件が発生し、メディアは大々的に報道しましたが、その影響を受けながらもナタリーは映画の道を進み続けました。結局、1969年にはアラン・ドロンとの離婚が決まり、離婚後は積極的に映画界に復帰しました。

ナタリーのその後のキャリアは順調であり、1971年には『もういちど愛して』でアランと再共演し、1972年にはエリザベス・テイラーの夫リチャード・バートンとの『青ひげ』に出演しました。その後も多くの映画作品に関わり、特に1976年の『華麗な関係』などが代表作として知られています。

1982年には自身での監督業にも挑戦し、映画『Ils appellent ça un accident』を手がけると、1988年には『スウィート・ライズ』の監督も務めました。女優業からは一時的に遠ざかるものの、2008年に『Nuit de chien』でカムバックを果たすことになります。

アラン・ドロンとの間に生まれた息子アントニーも俳優として活動し続けています。ナタリーは2021年にパリで膵臓癌により79歳で逝去しましたが、その数々の作品や個性的なキャリアは今なお多くの人々に愛され続けています。

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