青ひげ

青髭とは

『青髭』（仏: La Barbe Bleue）は、ヨーロッパ各地に伝わる物語の男性主人公で、シャルル・ペロー執筆の童話（1697年）として有名です。青い髭を生やした不気味な風貌で恐れられるこの人物は、これまで何度も結婚を繰り返しながら、妻たちが次々と行方不明になるという謎めいた存在です。グリム[[童話]]の初版にも収録されていましたが、後に削除されました。

あらすじ（ペロー版）

あるところに、青い髭を生やした富豪がいました。彼は「青髭」と呼ばれ、人々から恐れられていました。彼はこれまでに6回結婚しており、その妻たちはすべて行方不明になっていました。青髭は、ある美しい姉妹に求婚し、紆余曲折の末、妹と7回目の結婚をすることになりました。

結婚後、青髭は新妻に家の鍵束を渡し、「どこへ行っても構わないが、この中の小さな鍵で開く小部屋には絶対に入ってはいけない」と告げて外出しました。しかし、新妻は好奇心に負けて小部屋を開けてしまいます。そこには、青髭の先妻たちの死体が転がっていました。驚いた新妻は、鍵を血だまりに落としてしまい、血を拭いても洗い落とすことができませんでした。

帰宅した青髭は、鍵の血を見て新妻の裏切りを知ります。彼は新妻を殺そうとしますが、新妻は兄たちの到着を待ち時間を稼ぎます。間一髪のところで、新妻の兄たちが駆けつけ、青髭を倒しました。跡継ぎのいなかった青髭の遺産は新妻のものとなり、彼女は財産を兄たちや姉のために使いました。

ペロー版とグリム[[童話]]版の違い

ペロー版とグリム[[童話]]版には、以下のような違いがあります。

ペロー版には新妻の姉が登場しますが、グリム[[童話]]版には登場しません。
ペロー版では兄の人数が2人ですが、グリム[[童話]]版では3人です。
ペロー版では兄の職業は軍人ですが、グリム[[童話]]版では明確ではありません。
ペロー版では事前に約束した上で兄たちが城に現れますが、グリム[[童話]]版では新妻の叫び声を聞いて駆けつけます。
ペロー版では血の落ちない鍵は魔法によるものと明記されていますが、グリム[[童話]]版では不明です。
ペロー版は富裕層の生活について詳しく記述されていますが、グリム[[童話]]版では簡潔な描写です。
ペロー版には遺産の使い道に関する後日談がありますが、グリム[[童話]]版にはありません。

青髭のモデル

青髭のモデルとして有力視されているのは、ジャンヌ・ダルクの戦友であるジル・ド・レです。しかし、確かな証拠はありません。他にも、ヘンリー8世がモデルであるという説もあります。

マリア・タタールは、『千夜一夜物語』に登場するシャフリヤール王との関連性を指摘しています。シャフリヤール王もまた、妻への復讐から後妻を次々に切り捨てる暴君として描かれています。

青髭が主題の作品

青髭とその物語を題材とした作品は、オペラ、オペレッタ、映画、戯曲など、多岐にわたります。

アンドレ・グレトリ：オペラ『青髭ラウル』
ジャック・オッフェンバック：オペレッタ『青髭』：パロディ仕立ての喜劇で、青髭の女性観や王との対立などを描いています。
ポール・デュカス：オペラ『アリアーヌと青髭』：メーテルランクの戯曲を元にした、デュカス唯一のオペラ作品です。
バルトーク・ベーラ：オペラ『青ひげ公の城』：コダーイ・ゾルターンが作成した台本をもとに、バルトークが作曲したオペラ作品。
エミール・フォン・レズニチェク：3幕のメルヘン・オペラ『騎士青ひげ』
クロード・シャブロル監督：映画『青髭』：連続殺人犯アンリ・デジレ・ランドリューを題材にした作品です。
寺山修司：戯曲『青ひげ公の城』：バルトークのオペラを元にした作品です。


「青髭」の物語は、好奇心や禁忌、そして人間の心の闇を描いた、時代を超えて語り継がれる物語です。

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