ナットランナー

ナットランナーとは

ナットランナーは、ナットやボルト、ネジなどを締め付けるために使用される工具の総称で、「ナット自動締結機」とも呼ばれます。製造業の組み立て工程で欠かせない存在であり、効率的かつ正確な締結作業を支援します。

ナットランナーの機構

ナットランナーは、締め付ける対象物によって先端部分の形状が異なります。一般的には、ソケットやビットが用いられます。ソケットは1/4インチまたは3/8インチ、ビットは6.35mm六角や半月切り欠きのものが一般的です。

形状は、必要となる締め付け強度（トルク）や作業環境に応じて、以下の4つのタイプに分類されます。

1. ハンドナットランナー

手で持って作業を行うタイプのナットランナーで、以下の3つの形状があります。

ストレートタイプ

電動ドライバーのような形状で、グリップ部、モーター軸、締め付け部が一直線に配置されています。主に7Nm以下の低トルク帯で使用されます。

ピストルタイプ

ピストルのような形状で、トリガーを引くことで先端が回転します。主に12Nm以下の低トルク帯で使用されますが、反力機構を使用することで高トルクにも対応可能です。

アングルタイプ

グリップ部からモーター軸まではストレートですが、先端部で回転軸が90度変換されます。中トルク帯で使用されることが多く、反力を抑えるために両手で保持して作業します。反力機構を用いることで高トルクにも対応可能です。

2. フィクスチャータイプ

設備やロボットに搭載することを前提としたナットランナーで、スピンドルとも呼ばれます。ハンドナットランナーと比較して、より高い締め付け精度を実現できます。複数のボルトを同時に締め付ける必要がある場合にも用いられます。

ナットランナーの駆動方式

ナットランナーの駆動方式には、圧縮空気を利用するエアーモーターと、電動モーターの2種類があります。電動モーターで駆動するナットランナーは電動ナットランナーと呼ばれます。

トルクのかけ方

トルクのかけ方には、連続的にトルクを与えるダイレクト駆動方式と、パルス状のトルクを与えるパルス方式があります。

ダイレクト駆動方式: 連続的にトルクを加え、精密な制御が可能です。
パルス方式: パルス状にトルクを加え、締付完了時の反力を低減できますが、制御が難しいという側面もあります。

ナットランナーの制御

エアー駆動のナットランナーは、規定トルクに達するとクラッチが外れたり、シャットオフバルブが作動して回転を停止することで規定トルクでの締め付けを実現します。

電動ナットランナーでは、回転速度や角度、締付トルクをプログラムすることが可能で、状況に応じて自動で制御できます。

トルク測定および判定

ナットランナーのトルク測定には、モーターの電流・電圧値を計算する方法と、トランスデューサー（ひずみゲージ）の出力値を検出する方法があります。

締付結果の判定は、トルクや締め付け波形を基に行われ、良否の判断はOK/NOK（Not OK）で表示されます。判定結果は、ポカヨケコントローラーやラインコントロール、トレーサビリティシステムに送られ、データとして記録されます。

一般的に、トランスデューサー内蔵のナットランナーの方が、トルク測定の精度が高いとされています。

ナットランナーの精度

ナットランナーの精度は、設定トルクに対する締め付けトルクのばらつきで評価されます。電動ナットランナーのダイレクト駆動方式では、ISO5393によって精度が規定されています。

パルス駆動方式では、トルクのばらつきが大きいため、精度を規定する規格は存在しません。

一般的に、エアー駆動やパルス式電動ナットランナーは精度が低く、トランスデューサー内蔵のダイレクト駆動式電動ナットランナーが最も精度が高いとされています。

ナットランナーの近年のトレンド

近年では、自動車産業を中心に、様々な製造現場でナットランナーが利用されています。

従来の方法

従来は、エアー駆動や電動パルス方式のピストル型ナットランナーが主流でした。品質が重視される箇所では、トルクレンチで再測定し、マーキングを行うなど煩雑な作業が必要でした。

近年のトレンド

近年では、トランスデューサー内蔵のダイレクト駆動式電動ナットランナーが主流になりつつあります。締付時のトルク波形を測定し、異常を自動検出することで、締め付け不良を防ぐことが可能になりました。

また、トレーサビリティに対応するため、締め付け結果のデータを自動記録する機能や、作業ミスの防止のためのポカヨケ機構が搭載されたナットランナーも登場しています。さらに、無線制御や位置検出機能、姿勢制御機能などを搭載した高機能なナットランナーも開発されています。

これらの技術により、経験の浅い作業者でも高品質な締結作業が可能になり、人間工学に基づいた設計により作業者の負担も軽減されています。

ナットランナーおよび締付機器の主なメーカー

アトラスコプコ（スウェーデン）
エスティック（日本）
瓜生製作（日本）
三洋機工（日本）
第一電通（日本）
技研工業（日本）
コアテック（日本）
東日製作所（日本）
日本プララド（日本）
TONE(トネ)（日本）
Stanley Assembly Technologies（アメリカ）
Desoutter（フランス）
Cleco（アメリカ）
Aimco（アメリカ）
Cooper（アメリカ）
Ingersoll Rand（ドイツ）