ポカヨケ

ポカヨケとは

ポカヨケは、製造ラインにおける作業ミス（ヒューマンエラー）を防止するための仕組みや装置を指します。その語源は「ポカ（失敗）」を「ヨケる（回避する）」であり、製造現場でのミスを未然に防ぐことを目的としています。

ポカヨケの必要性

工場などの製造現場では、人の手による作業が数多く行われています。しかし、人の作業には常にミスが伴う可能性があり、それが不良品の発生や品質問題につながることが少なくありません。特に、製造後の検査段階でミスを発見した場合、修正には大きなコストと時間がかかります。そのため、製造工程の初期段階でヒューマンエラーを防止するための対策が重要となります。ポカヨケは、この問題を解決するための有効な手段として、多くの製造ラインに導入されています。

ポカヨケの歴史

ポカヨケの概念は、1961年に日本能率協会の新郷重夫氏が、組み立て作業中のバネの入れ忘れに関する相談を受けたことがきっかけで生まれました。この時、新郷氏は「使うバネを小皿に入れてから作業し、小皿にバネが残っていれば入れ忘れミスが発生したとすぐに分かる」という簡単な仕組みを考案しました。これは、後のポカヨケの基礎となる考え方でした。当初は「バカヨケ」と呼ばれていましたが、1963年に「ポカヨケ」と改称されました。

ポカヨケの仕組み

ポカヨケの基本的な考え方は、作業者が間違った作業をしようとしても、物理的に不可能なようにすることです。例えば、よく似た部品をそれぞれ異なる位置に取り付ける必要がある場合、部品と装着部分の形状をそれぞれ変えておくことで、正しい部品を正しい位置にしか取り付けられないようにします。これにより、間違った部品を取り付けようとしても物理的に不可能となり、ミスを未然に防ぐことができます。

また、ポカヨケは作業者の安全を確保する上でも重要な役割を果たします。例えば、切断機を稼働させるスイッチは、通常は一つで十分ですが、片手で押している際に、もう片方の腕が切断されるといった事故が起こる可能性があります。そこで、スイッチを機械の両端に設置し、両手で同時に押さないと稼働しないようにすることで、作業者の安全を確保することができます。安全な作業環境を作ることは、製造ラインの停止を防ぎ、製品の品質管理にもつながります。

トヨタ生産方式とポカヨケ

ポカヨケは、トヨタ生産方式の基本概念の一つとして数えられています。トヨタ生産方式では、「後工程はお客様」という考え方があり、後工程に不良品を渡さないことが重要視されています。ポカヨケは、この考え方を実現するための有効な手段であり、製造工程でのミスを未然に防ぐことで、製品の品質向上に貢献します。ポカヨケの基本コンセプトには、新郷重夫氏らが深く関わっていました。

国際的な広がり

ポカヨケは、日本の製造業が海外に進出したことや、海外の製造業が日本の製造業を研究したことをきっかけに、世界中に広まりました。また、新郷重夫氏の著書も、ポカヨケの普及に大きな役割を果たしました。その結果、「Poka-yoke」という言葉は、製造業の分野では国際的に通用する用語となっています。