ナナロク社

ナナロク社（ななろくしゃ）

株式会社ナナロク社は、2008年に創業した日本の出版社です。主に詩集や歌集、エッセイといった人文書、そして写真集や芸術関連の書籍を手がけています。

出版の特徴

ナナロク社の出版物は、その造本や装丁に強いこだわりが見られることで知られています。著名なブックデザイナーである祖父江慎氏や名久井直子氏らが装丁を手がけており、一冊一冊が丁寧に作り込まれている点が特徴です。紙の質や判型、デザインなど、書籍全体の物質としての魅力を追求した本が多く刊行されています。

特に大きな注目を集めたのは、2011年に刊行された川島小鳥氏の写真集『未来ちゃん』です。この作品はベストセラーとなり、第42回講談社出版文化賞写真賞を受賞するなど、ナナロク社の名を広く知らしめるきっかけとなりました。他にも、写真集としては植本一子氏や近藤聡乃氏、パトリック・ツァイ氏の作品、芸術関連では池田修三氏の版画集や絵葉書、岡﨑乾二郎氏の視覚論、さらにはちひろ美術館監修による『村上春樹とイラストレーター』なども手がけています。

人文書分野では、詩集や歌集に力を入れています。谷川俊太郎氏の詩集や、木下龍也氏、岡野大嗣氏といった現代歌人の歌集を多数刊行しています。また、岩崎航氏の詩集や一青窈氏の詩集なども出版しています。エッセイ分野では、鹿子裕文氏のルポルタージュや、作家・批評家の若松英輔氏、写真家の鷹野隆大氏のエッセイ集など、幅広い著者の作品を扱っています。田尻久子氏の動物に関する著作や、児童文学作家・鳥羽和久氏の教育論、さらには舞城王太郎氏の小説などもラインナップに加わっています。

海外文学としては、タイの漫画家ウィスット・ポンニミット氏の作品なども紹介しています。絵本やコミックスの分野では、藤岡拓太郎氏やおほしんたろう氏のユニークな作品、史群アル仙氏の漫画作品集などを手がけています。これらの多様なジャンルにわたり、それぞれの書籍が持つ個性を引き出すような出版活動を行っています。

新人育成と流通

ナナロク社は、新人作家の育成にも積極的に取り組んでいます。2020年からは、新人歌人が初めての歌集を刊行することを目的とした公募企画「あたらしい歌集選考会」を主催しています。この選考会は歌人の木下龍也氏と岡野大嗣氏が選者を務め、第一回では森口ぽるぽ氏と島楓果氏が受賞し、それぞれの第一歌集がナナロク社から刊行されました。このような取り組みを通じて、現代短歌の新たな担い手を生み出すことにも貢献しています。

流通面では、主に地方・小出版流通センターと取引を行っており、小規模ながら個性的な出版物の全国への供給を可能にしています。

沿革

2008年 - ナナロク社として創業を開始。
2011年 - 川島小鳥氏の写真集『未来ちゃん』を刊行。同作は第42回講談社出版文化賞写真賞を受賞し、ベストセラーとなる。
* 2020年 - 第一回「あたらしい歌集選考会」を開催。以降、新人歌人の第一歌集刊行を支援する活動を継続。

ナナロク社は、量産を追求せず、一冊一冊に編集者やデザイナーの情熱を注ぎ込んだ、質の高い書籍づくりを目指す出版社と言えるでしょう。詩歌や写真集を中心に、文芸、芸術、コミックなど幅広い分野で、独自の存在感を放っています。

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