ナベヅル

ナベヅル（鍋鶴）

ナベヅル（学名：Grus monacha）は、ツル目ツル科に属する鳥類で、全長約96.5cmと比較的小柄なツルです。その名の由来は、灰黒色の羽衣が鍋についた煤のように見えることからきています。

分布

繁殖地は、中国東北部、ロシア東南部、モンゴル北西部などで、冬になると日本、朝鮮半島南部、長江下流域へ渡り越冬します。世界の生息数は約1万5千羽と推定され、そのうち8割から9割にあたる約1万4千羽が鹿児島県出水市の出水平野で冬を越します。

形態

全長：約91-100cm
翼開長：160-180cm
体重：オス3.28-4.87kg、メス3.4-3.74kg

成鳥の頭頂部は黒い毛状の羽毛で覆われ、一部が裸出して赤色をしています。頸部は白色、体部は灰黒色です。三列風切は長く房状で、静止時には尾羽を覆います。くちばしは黄色みがあり、足は黒色または緑黄色です。幼鳥は頭部が黄褐色を帯び、体は成鳥より黒っぽいです。

生態

沼地、湿原、河口、干潟、農耕地などに生息し、雑食性で植物の根、昆虫、両生類などを食べます。越冬地では水田の刈跡でイネの二番穂を採食するほか、出水では小麦やイワシが給餌されます。

越冬期は、つがいや家族群で見られ、求愛行動も観察されます。鳴き声は「クールルン」や「クルルー」と聞こえ、ディスプレイ時には雌雄で鳴き交わします。

繁殖はタイガ地域の森林地帯で行われ、湿原に巣を作り、5月に2個の卵を産みます。抱卵期間は約27-30日で、雄は生後4-5年、雌は生後2-3年で性成熟します。

日本への渡来

日本では鎌倉時代から「くろづる」として知られ、江戸時代には各地に渡来していました。現在では鹿児島県出水市が主要な越冬地となっています。出水平野への渡来数は、戦後に一時減少しましたが、保護活動により増加しました。

人間との関係

農作物を食害することもありますが、保護の対象となっています。山口県八代のナベヅルは日本初の禁猟対象となり、出水平野と八代盆地のツルは国の天然記念物に指定されています。越冬地の過密状態による感染症リスクが懸念されており、越冬地の分散が課題となっています。

保護状況

環境省レッドリストで絶滅危惧II類 (VU)に指定されています。中国では国家一級重点保護野生動物に指定されています。

複数の地域でデコイを設置するなど、越冬地を分散させる試みが行われています。

参考文献

『自然紀行 日本の天然記念物』、講談社、2003年

関連項目

ツル科
ツル属
鳥類レッドリスト (環境省)
出水ツル渡来地

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