ナポレオン・ルイ・ボナパルト

ナポレオン・ルイ・ボナパルト（1804年 10月11日 - 1831年 3月17日）は、フランス第一帝政期からその崩壊後にかけ、ボナパルト家の一員として生きた人物です。ホラント王ローデウェイク1世として知られるルイ・ボナパルト（フランス皇帝ナポレオン1世の弟）と、ナポレオンの最初の妻ジョゼフィーヌの娘であるオルタンス・ド・ボアルネの間に、次男として生まれました。彼の人生は、皇帝一族の激動の運命と深く結びついていました。

幼い頃、ナポレオン・ルイはボナパルト家の後継者問題において重要な位置を占めることになります。1807年、兄のナポレオン・シャルルがわずか4歳で夭折したため、彼はホラント王国の王太子となりました。さらに、当時まだ嫡出子のいなかった皇帝ナポレオン1世の甥の中で最年長であったことから、1811年にナポレオン2世が誕生するまでの間、フランス帝国の皇位継承順位において第1位に位置づけられていました。これは、若き彼にとって重い期待と複雑な立場を意味しました。

また、叔父であるナポレオン1世は、彼に特定の役割を与えました。1809年には、フランスの衛星国であったベルク大公国の大公に任命されています。この地位は形式的なものでしたが、彼が帝国の勢力圏における要人の一人であることを示していました。彼は1813年までこの称号を保持しました。

1810年、ナポレオン・ルイの父ルイ・ボナパルトは、ナポレオン1世との対立からホラント王位を退きます。これに伴い、ナポレオン・ルイはわずか6歳でホラント王ローデウェイク2世として即位しました。しかし、この治世は極めて短期間に終わります。ナポレオン1世がホラント王国をフランス帝国に併合することを決定し、フランス軍が侵攻してきたためです。彼の王としての期間は、わずか10日間に過ぎませんでした。

1815年、ワーテルローの戦いでナポレオン1世が最終的に敗北し、退位を余儀なくされると、ボナパルト家の人々は窮地に立たされました。フランスではブルボン朝が復活し、帝国の時代は終わりを告げました。ナポレオン・ルイもまた、他の家族とともに亡命生活を送ることになります。しかし、ボナパルト家の人々の間には、失われた栄光を取り戻し、帝国を再興しようという夢が根強く残っていました。

私生活では、ナポレオン・ルイは従姉にあたるシャルロットと結婚しています。シャルロットは、ナポレオン1世の長兄でスペイン王を務めたジョゼフ・ボナパルトの末娘でした。この結婚は、ボナパルト家内の絆を強めるためのものであったと考えられます。

亡命後のナポレオン・ルイは、イタリアへと移り住み、そこで当時のヨーロッパの政治情勢に深く関わることになります。彼は、イタリア統一を目指す秘密結社であるカルボナリの活動に参加しました。これは、彼が単なる亡命貴族ではなく、自身の信念を持って行動する人物であったことを示しています。しかし、カルボナリの活動はオーストリア帝国の当局によって厳しく弾圧されていました。ナポレオン・ルイは官憲の追及を逃れるため、イタリア国内を潜伏しながら移動していましたが、1831年 3月17日、滞在中に麻疹に罹患し、若くしてこの世を去りました。享年26歳でした。

奇しくも、彼の死は、ナポレオン1世の唯一の嫡出子であり、「ローマ王」と呼ばれたナポレオン2世が病没するわずか1年ほど前の出来事でした。ボナパルト家の正統な後継者と目された二人が、相次いで若くして亡くなったことは、帝政復古を目指す一族にとっては大きな痛手となりました。ナポレオン・ルイの遺体は、フランスのイル＝ド＝フランス地方にあるサン＝ルー＝ラ＝フォレに埋葬されています。

ボナパルト家による帝国の再興は、最終的に彼の弟であるシャルル・ルイ＝ナポレオンによって成し遂げられます。シャルル・ルイ＝ナポレオンは、1848年の二月革命後にフランス大統領となり、その後クーデターを経て1852年にフランス第二帝政を樹立し、ナポレオン3世として即位しました。ナポレオン・ルイは、その弟が帝国の夢を実現する姿を見ることはありませんでしたが、彼の存在はボナパルト家の歴史の一頁に刻まれています。

もう一度検索