ナリヤラン

ナリヤラン (成屋蘭)

ナリヤラン（学名：Arundina graminifolia）は、常緑性の地生ランとして熱帯アジア全域に広く分布しています。日本では主に八重山諸島（石垣島と西表島）に自生しており、沖縄本島中部にも見られますが、こちらは栽培されたものが逸出した個体です。

和名の由来

ナリヤランという和名は、西表島近くの小島内離島にあった成屋集落に由来しているとされ、この集落は現在孤立した廃村となっています。

特徴

ナリヤランは、新旧の複数の茎が束生し、葉は10から20センチメートルの長さがあり、線状披針形で2列に互生します。見た目はイネ科のアシに似ています。茎の基部には偽球茎があり、ひも状の根がたくさんついています。八重山諸島では草丈は50cm程度が一般的ですが、熱帯の大型系統では1mから2mを超えることもあります。

花茎は茎の先からさらに伸び、総状花序に複数の花がつきます。通常、花の直径は約4cmで、淡紅紫色が一般的ですが、唇弁の先端はより濃い紅紫色で、中央には黄色の斑紋があります。花の形はカトレアに似ていますが、ナリヤランの花は数日でしぼんでしまいます。花期は一定ではなく、植物が一定の大きさに育つと花を咲かせます。熱帯地域では四季を通じて開花が見られます。

植物体や花色は原産国により変化することがあり、それぞれを同種か異種と見なす意見があり、学名も複数存在し、どれが有効名かの意見も分かれています。

生育環境

ナリヤランは明るい草地に適応しており、道路沿いや放棄されたパイナップル畑、放牧跡地などの人為的に作られた裸地に群落を作ることがあります。しかし、こうした環境は一時的であり、植生の変化と共に群落が消失することも多いです。また、盗掘の対象になりやすく、安定した場所で観察することは難しいのが実情です。

保全状態

日本の環境省のレッドリストでは、この植物は絶滅危惧IB類（EN）に分類されており、保護が求められています。

栽培について

ナリヤランは高温の環境であれば一般的な植物と同様に庭土に植えて育てることができ、熱帯地域では庭園にも植栽されます。日本本土でも摂氏10から15度で越冬できるため、一般の洋ランが栽培できる設備があれば栽培はそれほど難しくありません。ただし、冬期間には成長が遅くなり、年に1回の開花にとどまることもあります。花が短命であることを考慮すると、他の洋ランに比べて満足度が低いかもしれません。

特に、栽培スペースをとる植物であるため、日本本土で栽培しているのは原種植物を愛好する少数のコレクターに限られています。無菌播種などの方法での増殖は容易ですが、営利目的で苗が生産されることはあまりありません。

園芸種について

園芸用に改良された白花品種もあり、最近では草丈30cm程度で開花する小型系統が日本に導入されています。基本種と色調は異なるものの、「ナリヤラン」として流通することが多いため、専門業者でもこの小型系統の存在はあまり知られていない可能性があります。

その他の特徴

西表島産のナリヤランは3倍体であり、花粉が柱頭に付着すると、受精なしで種子を生成する単為発生の特性を持っています。他の産地の株についても同様の特性がある可能性があります。

たくさんの魅力を持つナリヤランは、その美しさや生育環境に特有な点から、多くの植物愛好家にとって注目されています。

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