ナルゲス・モハンマーディ

ナルゲス・モハンマーディ: イランの人権活動家とノーベル平和賞受賞者

ナルゲス・モハンマーディ（1972年4月21日生まれ）は、イランの科学者であり、人権活動家です。2023年には、彼女が獄中にある中でノーベル平和賞を受賞しました。イラン人がノーベル平和賞を受賞するのは、シーリーン・エバーディー以来二人目のことです。モハンマーディは, エバーディーと共に女性の権利と人権の擁護に尽力してきました。

人物・経歴

ナルゲスはイラン北西部のザンジャーンに生まれ、主にガズヴィーンのイマーム・ホメイニ大学で核物理学を学びました。彼女の人権擁護活動の原点は、1979年のイラン革命に遡ります。幼少期に、彼女は家族が逮捕され、いとこが処刑されるという衝撃的な体験をしました。この事件は、彼女が死刑の廃止と女性の権利を求めるきっかけとなりました。

彼女はシーリーン・エバーディーが設立した人権擁護者センター（DHRC）で副代表を務めており、夫のタギ・ラフマニも人権活動家として知られています。タギとともに男女の双子を持ち、現在はフランスに亡命して生活しています。2016年、ナルゲスは「社会体制を脅かすプロパガンダ」の理由でイラン当局に拘束され、16年の禁錮刑を言い渡されました。

2020年には一時釈放されましたが、2022年に再び拘束され、エヴィーン刑務所に収監されました。彼女は独房での過酷な体験をもとに『白い拷問』という本を出版し、自らの経験を語っています。アムネスティ・インターナショナルからは良心の囚人として認識されています。

抗議運動とノーベル平和賞

イランでの抗議運動が始まった2022年秋、ナルゲスは家族のInstagramを通じて支持を表明しました。2023年9月16日、抗議の象徴とされるヘジャブ（スカーフ）に火をつける姿を見せ、その行動は注目を集めました。

2023年、ノルウェーのノーベル委員会は彼女にノーベル平和賞を授与し、彼女の人権と自由のための活動を称賛しました。ノーベル委員会によれば、ナルゲスは13回の拘束と5度の有罪判決を受けており、合計で31年の禁錮刑と154回の鞭打ちに達したとされています。彼女はニューヨーク・タイムズの記者に対し、受賞がさらなる情熱と希望を与えてくれると語っており、「勝利は近い」というメッセージを託しました。

ナルゲスの家族は受賞の報を受け、「この成果は、イランの人々、特に正義、平和、平等を求める女性たちのためのものだ」と発表しています。逆に、イランの保守派メディアはこの授賞を「政治的な賞」と批判しています。

獄中から秘密裏に持ち出された彼女のメッセージは、娘のキアナによって読み上げられ、ノーベル平和賞の公式サイトに掲載されました。その中で彼女は、デモのスローガン「女性、命、自由」が響く刑務所内の様子を語り、民主主義や自由、人権獲得のために引き続き戦う意志を改めて示しました。彼女は「勝利は容易ではないが、確かなものだ」と結びました。

著書

ナルゲス・モハンマーディの著作『白い拷問』は、彼女の経験を描いた重要な書籍として注目されています。翻訳は星薫子によるもので、講談社から2024年に出版予定です（ISBN: 978-4065353813）。

まとめ

ナルゲス・モハンマーディの闘いは、女性の権利や人権の問題に対する賢明なメッセージを世界に発信しています。彼女の活動はまだ続いており、イランだけでなく、全世界での人権の重要性を再認識させる機会となっています。彼女の存在とその活動は、多くの人に勇気を与えています。

もう一度検索