ナルヴァ条約

ナルヴァ条約について

ナルヴァ条約は、大北方戦争の真っただ中にあたる1704年8月30日に締結された歴史的な条約です。この条約は、ポーランド＝リトアニア共和国のアウグスト2世に忠誠を誓った一部がスウェーデンに対抗する反スウェーデン同盟に参加する形で成立しました。

背景

大北方戦争は、スウェーデンによるバルト海地域の覇権を巡る争いで、さまざまな国が複雑な同盟関係を結びました。この戦争の発端は、アウグスト2世がポーランド国王およびザクセン選帝侯に就任したことにありました。彼は1699年にロシアのツァーリピョートル1世やデンマーク＝ノルウェー国王フレゼリク4世と同盟を結び、スウェーデンに対する連携を強化しました。しかし、戦争が進む中で、デンマークは撤退を余儀なくされ、ロシアも初期の敗北を経験しました。

その後、スウェーデンの国王カール12世がポーランド国内でアウグスト2世を追い詰め、彼は1704年に王位を追われました。アウグスト2世の対立候補、スタニスワフ・レシチニスキがポーランド王として選出された結果、ポーランドは内戦状態に突入しました。しかし、アウグスト2世には依然として広範な支持が残っており、彼とその支持者たちはスウェーデンに宣戦布告を行い、ナルヴァにおいて反スウェーデン同盟に加わることとなります。

条約の内容

ナルヴァ条約の交渉を代表したのはトマシュ・ジャウィンスキです。彼は、ロシアによるナルヴァ包囲戦においてザクセン軍及びポーランド軍を指揮した経験を持つ人物です。条約には、ロシアのピョートル1世およびアウグスト2世、さらにポーランドのマグナートたちが署名しました。この条約は、「攻守同盟」として知られ、ポーランドとロシアは互いに戦争を継続し、条約を締結するには両者の同意が必要とされました。

また、条約では年に20万ルーブルの援助金をロシアがアウグスト2世に提供することが約束され、1万2千のロシア軍がポーランドに駐留することも取り決められました。さらに、ウクライナの侵攻やロシアのリヴォニア侵攻の回復という具体的な軍事的目標も設定されました。

影響

この条約は、ピョートル1世にとって重要な戦略的意義を持つものでした。ポーランド＝リトアニア戦線を維持することで、スウェーデン軍に対して圧力をかけることができ、特にコニェツポルの戦いでの勝利によって、カール12世がロシア戦役に必要な物資の供給路を断つことができました。その一方で、ロシアは新たな税を国民に課し、援助資金を捻出する手段として農民への負担を強いることとなりました。

アウグスト2世にとってもこの条約はメリットがありました。彼の地位が脅かされていた中、ピョートル1世はアウグスト2世に対する支持を明確に示し、彼の要求に応じて特定の条件を実行しました。しかし、ロシアの「友好的な占領」が期待通りに行われず、最終的にはピョートル1世が引き渡しに関して強権を発動し、ロシアに実質的に編入されることを余儀なくされました。

さらに、ポーランド＝リトアニア共和国においては、スタニスワフ・レシチニスキを支持する勢力がワルシャワ連盟を結成し、1705年のワルシャワ条約でスウェーデンと同盟を結ぶことになりました。ナルヴァ条約は、この時期の重要な動向を象徴するものであり、大北方戦争の結果に多大な影響を与えたのです。

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