反スウェーデン同盟

反スウェーデン同盟の結成と背景

1699年、北東ヨーロッパにおいて、スウェーデンに対抗する同盟が結成されました。これは、ロシア（当時のモスクワ大公国）、ザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト1世（兼ポーランド王アウグスト2世）、そしてデンマーク王フレデリク4世によって、ザクセンの首都ドレスデンで秘密裏に締結されました。この同盟は、日本では「北方同盟」とも呼ばれることがあります。

当時のスウェーデンは、バルト海地域において強大な影響力を持っており、その支配は周辺諸国にとって脅威となっていました。デンマークはシュレースヴィヒ＝ホルシュタイン公国との間で領土問題を抱え、ポーランドはかつてスウェーデンに奪われた領土の奪還を望んでいました。一方、ロシアは不凍港を求めて南下政策を進めていましたが、オスマン帝国との対立を避けるためにバルト海への進出を模索していました。これらの国々の思惑が一致し、反スウェーデンという共通の目標のもと、同盟が結ばれることになったのです。この同盟を仲介したのは、スウェーデン領リヴォニアから亡命してきたバルト・ドイツ人の貴族、ヨハン・ラインハルト・フォン・パトクルでした。

同盟の成立と大北方戦争の勃発

1698年から秘密裏に行われた交渉を経て、1699年にドレスデンで同盟が正式に締結されました。この同盟により、1700年1月または2月にスウェーデンへの攻撃を開始することが決定されました。デンマークはシュレースヴィヒ＝ホルシュタイン公国、ポーランドはスウェーデン領リヴォニア、ロシアはスウェーデン領インゲルマンランドをそれぞれ攻撃することになりました。この攻撃開始とともに、大北方戦争が勃発しました。

戦争の経過と影響

戦争初期、スウェーデンは軍事力で優位に立ち、デンマークとポーランドを一時的に屈服させました。しかし、ロシアが次第に力をつけ、プロイセンも参戦したことで、スウェーデンは劣勢に立たされていきました。1720年のストックホルム条約でデンマーク、ポーランドなどとの講和が成立し、1721年のニスタット条約でロシアとの講和が成立しました。これにより、スウェーデンはバルト海の覇権を失い、ロシアが新たにバルト海の強国として台頭しました。

北方同盟は、1700年にデンマーク、1706年にポーランドが一時的に脱落しましたが、1709年のポルタヴァの戦い以降、ロシアが主導となって再編されました。1715年までにはイギリスとプロイセンも同盟に参加しましたが、1720年のスウェーデンとの講和によって同盟から離脱しました。スウェーデン王カール12世が戦死した1718年以降、同盟は分裂し始めましたが、スウェーデンは長期にわたる戦争で国力を著しく消耗しており、反撃の余力はありませんでした。この戦争の結果、デンマークは現状維持に成功し、ポーランドは当初の目的を果たすことはできませんでしたが、ロシアが最も大きな利益を得ました。バルト海の覇権を確立したロシアは、ヨーロッパ列強の一角として台頭し、北東ヨーロッパにおける最強国となりました。この同盟は、北東ヨーロッパの勢力図を大きく塗り替えることになったのです。

再結成された北方同盟

1709年以降、北方同盟は以下の条約を通じて再結成されました。

1709年：ソーン条約（ロシアとポーランド・リトアニア共和国）
1709年：ドレスデン条約（デンマーク＝ノルウェーとポーランド・リトアニア共和国）
1709年：コペンハーゲン条約（ロシアとデンマーク＝ノルウェー）
1710年：ハノーファー条約（ハノーファー選帝侯）
1713年：シュヴェート条約（ロシアとブランデンブルク＝プロイセン）
1715年：ベルリン条約（イギリスとデンマーク＝ノルウェー）
1715年：シュテッティン条約（イギリスとブランデンブルク＝プロイセン）
1715年：グライフスヴァルト条約（イギリスとロシア）

反スウェーデン同盟、そしてその後の再結成は、大北方戦争を通じて、バルト海地域だけでなく、北東ヨーロッパ全体の勢力均衡を大きく変動させる要因となりました。スウェーデンの衰退とロシアの台頭は、後のヨーロッパ史においても重要な意味を持つ出来事です。

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