ナンガ・パルバット

ナンガ・パルバット：峻険な巨峰とその歴史

ナンガ・パルバットは、パキスタンのギルギット・バルティスタンにそびえる、標高8126mの巨大な山です。ヒマラヤ[[山脈]]に属し、世界で9番目に高い山として知られています。その名前は、ウルドゥー語で「裸の山」を意味し、周囲に高い山がないことから、その姿が際立って見えることに由来します。

概要

この山は、南側のルパール壁が特に有名で、標高差4800mと世界最大級の壁として知られています。この壁は、登山者にとって非常に困難なルートであり、初登攀はラインホルト・メスナーとギュンター・メスナー兄弟によって達成されました。また、西側のディアミール壁も難易度が高く、多くの登山家を悩ませてきました。

南西稜は「マゼノリッジ」と呼ばれ、13kmの間に7000m峰を6つ、6000m峰を2つ含む、ヒマラヤでも最大級の稜線となっています。その複雑な地形は、登山者にとって大きな挑戦であり、多くの困難を乗り越えてきた登山家たちの歴史が刻まれています。

ナンガ・パルバットは、その難易度の高さから「人喰い山」とも呼ばれてきました。初登頂を果たすまでに、多くの登山隊が命を落とした歴史があります。ヘルマン・ブールが1953年に初登頂するまで、多くの犠牲者を出し、その名は世界に知れ渡りました。

登山史

ナンガ・パルバットの登山史は、多くの挑戦と悲劇、そして偉業で彩られています。

1895年: アルバート・フレデリック・ママリーが初挑戦。ディアミール壁から標高6100m地点まで到達しますが、悪天候のため下山。その後、消息を絶ち、ナンガ・パルバット最初の犠牲者となりました。
1932年: ウィリー・メルクールらが率いる米独合同隊が北東稜から登頂を試みますが、断念。
1934年: メルクール率いるドイツ隊が再度挑戦しますが、撤退中に悪天候に襲われ、メルクールを含む9人が死亡。
1937年: カール・ウィーン率いるドイツ隊が同じルートで挑戦しますが、雪崩によりキャンプ地が直撃され、ウィーンを含む16名が死亡。
1953年: ヘルマン・ブールが単独で初登頂に成功。無酸素での偉業でした。
1962年：トニー・キンスホーファーらがディアミール壁を初登攀。
1970年: ラインホルト・メスナーとギュンター・メスナー兄弟がルパール壁初登攀に成功。下山中にギュンターが雪崩で命を落とすという悲劇に見舞われました。
1976年: ハンス・シェル隊長率いるオーストリア隊がルパール壁の新ルートで登頂に成功。以降、シェル・ルートとして知られるようになります。
1978年: ラインホルト・メスナーが単独・アルパインスタイルでディアミール壁の新ルートから初登頂。
1983年: 谷口守、中西紀夫が日本人初の登頂に成功。
1988年: 遠藤由加が日本人女性初の無酸素登頂を達成。
2012年: サンディ・アランとリック・アレンがマゼノリッジの完全縦走による登頂を成し遂げました。
2013年: 武装集団がベースキャンプを襲撃し、外国人登山者10人と現地人ガイド1人が死亡する痛ましい事件が発生しました。
2016年: シモーネ・モロらが冬季初登頂に成功。これにより、ナンガ・パルバットは冬季未踏峰ではなくなりました。
2018年: エリザベート・レボルとトマシュ・マツキェビッチが冬季2回目の登頂に成功。レボルは女性初の冬季登頂となりましたが、下山中にマツキェビッチが衰弱し、救助隊の到着を待たずして命を落としました。

ナンガ・パルバットが登場する作品

ナンガ・パルバットは、その壮絶な歴史と景観から、多くの作品に登場しています。

セブン・イヤーズ・イン・チベット: ハインリヒ・ハラーの同名小説を映画化した作品。
ヒマラヤ　運命の山: 1970年にルパール壁の初登攀を成し遂げたメスナー兄弟の栄光と悲劇を描いた映画。
孤高の人: 登山をテーマにした漫画で、主人公がナンガ・パルバット登頂を目指す。
大岩壁: 笹本稜平の小説。
しずかの山: 松本剛の漫画で、主人公がテロリストとともにナンガ・パルバットに挑む。

これらの作品を通じて、ナンガ・パルバットの魅力と、登山家たちの挑戦と苦悩が広く知られるようになっています。

まとめ

ナンガ・パルバットは、その美しさと厳しさから、多くの登山家を魅了し続けています。その歴史には、多くの犠牲がありましたが、同時に、人類の勇気と挑戦の象徴でもあります。今後も、ナンガ・パルバットは、登山史の中で重要な存在として語り継がれていくことでしょう。

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