ラインホルト・メスナー

ラインホルト・メスナー

ラインホルト・メスナー（Reinhold Andreas Messner、1944年9月17日生まれ）は、南チロル出身の著名な登山家・冒険家・作家であり、彼が成し遂げた業績は多岐にわたります。特に1986年には人類初の8000メートル峰全14座の無酸素登頂を達成したことで知られ、登山界の伝説とも言える存在です。

幼少期と成長

メスナーは、イタリア北部トレンティーノ＝アルト・アディジェ州ボルツァーノ自治県のブレッサノーネで生まれました。彼は大きな大家族の中で育ち、父親は教師でした。南チロル地域はドイツ語圏で、メスナーはドイツ語とイタリア語のバイリンガルであり、英語も流暢に使いこなします。

若い頃から登山に興味を持ち、十代の間に500回以上の登攀を行いました。22歳の時にはグランド・ジョラス北壁を登頂し、さらに1969年にはアイガー北壁を当時の世界最短記録で登る快挙を成し遂げました。この試みは彼の名声を高めるきっかけとなりました。

悲劇と挑戦

1970年、メスナーは弟のギュンターとともにナンガ・パルバット登山に挑みました。晴れた日に兄は単独での登攀を決行、弟は下山の責任を担いましたが、ギュンターは兄を追いかけて同行しました。二人は無事に初登頂を果たしましたが、下山時の悪天候により予期しない事態に直面します。

ギュンターは体力を消耗し、耐え難い寒さの中で下山が困難に。兄弟はキャンプから離れてしまい、メスナーは一度は弟を見失いました。その結果、メスナーは重度の凍傷を負い、帰国後に6本の指を切断する羽目に。弟の逝去は彼にとって心痛の起点となり、ナンガ・パルバットで10回もの捜索を繰り返すことになります。彼の悲劇は息を呑むドラマとなり、「ヒマラヤ 運命の山」として映画化されました。

8000メートル峰への挑戦

この悲劇以来、メスナーは17年間で全14座の8000メートル峰を無酸素登頂し成功を収めました。1975年には世界初のアルパインスタイルによる8000メートル峰の登頂をも果たしました。1978年には、ナンガ・パルバットでもう一度単独登頂を果たし、その年にはエベレストでも無酸素登頂に成功。この成果は彼を登山界の権威たらしめました。

彼の登頂歴は、1982年のカンチェンジュンガ、ガッシャーブルムII峰、ブロード・ピークをはじめとし、多くの名山があります。また、彼はグリーンランドや南極の横断等、登山以外でも数々の冒険を続けています。

名誉と承認

長きにわたる登山の貢献により、メスナーは2001年にイギリス王立地理学会から金メダルを受賞し、2018年にはアストゥリアス皇太子賞のスポーツ部門を獲得しました。また、彼の人生と冒険は多くの書籍や映画に取り上げられ、広く知られています。

弟ギュンターの発見

2005年、メスナーは1970年に失った弟ギュンターの遺体が発見されるという運命的な出来事に直面します。遺品の発見により、彼に対する非難は薄れ、それまでの苦悩にも一つの終止符を打つこととなります。家族での火葬を経て、彼はいまもトレンティーノ＝アルト・アディジェ州で名誉市民として生活しています。

ラインホルト・メスナーは、ただの登山家にとどまらず、その人生を通じて冒険や悲劇、友情を見つめ直し続ける、真の探検者の象徴です。

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