ナンセンのフラム号遠征

ナンセンのフラム号遠征

フリチョフ・ナンセンのフラム号遠征は、1893年から1896年にかけて行われた北極探検であり、彼の独自のアイデアによって実現したものです。この遠征は、北極海の自然の潮流を利用して地理的な北極点への到達を試みるものであり、多くの探検家たちから懐疑的な声が挙げられる中で始まりました。ナンセンは、彼の船フラム号を駆使して北極海東部へ向かい、氷の中に船を閉じ込め、漂流することで北極点に至ることを期待しました。

遠征の発想

ナンセンの遠征のアイデアは、アメリカ海軍の船ジャネット号の沈没事件からインスピレーションを得たもので、1881年に北極海を渡ってきた遺物の研究が基礎となっています。この時、気象学者ヘンリク・モーンが提唱した「北極海は東から西に流れる潮流が存在する」との仮説が、ナンセンを遠征へと駆り立てました。彼は船のデザインにおいても、氷の圧力に耐えうる形状や強度を追求しました。

船と乗員の選定

ナンセンは、特殊な船腹デザインを持つフラム号を設計し、1892年に完成させました。彼は、小規模で訓練を受けた乗員を選抜し、最終的に12人の隊員をフラム号に乗せて出航しました。船の操縦士や科学者、医師、食糧管理係などが一堂に会し、冰海への冒険に備えたのです。

出発と初期航海

1893年の6月24日、フラム号はクリスチャニアを出航しました。旅の最初は順調でしたが、進行中に氷に阻まれ立ち往生することが何度も起こりました。ナンセンは氷の状況に応じて航路を変更し、シベリアの北海岸を目指しました。

漂流と科学的観測

フラム号は、北での漂流を開始し、通常とは異なる速度で北極点を目指しました。これにより、ナンセンと乗員は科学的観測を行いながら新しい発見を重ねました。特に、北極海の深さや潮流の観測結果は後の研究にとって重要な基礎となりました。

北極点への冒険

約1年半後、ナンセンは漂流の不確実性を考慮し、北極点を目指すためにヨハンセンと共に犬橇での往復を開始しました。最北端の地点で北緯86度13.6分を記録し、北極点には到達できませんでしたが、この地理的成果も評価されました。

帰還の道

長期にわたる氷の上での旅を終えたナンセンとヨハンセンは、最終的にゼムリャフランツァヨシファに到達し、さまざまな困難を乗り越えながら生還しました。一方、フラム号は北大西洋に漂流のうちに帰還しました。ナンセンはこの経験から多くの科学的データを収集し、北極探検の方法に革命をもたらしました。

探検の評価

この遠征は、北極海の地理や生態系に関する新たな知見を提供し、ナンセンの学問的・探検家としての地位を確固たるものにしました。彼の手法や技術は以後の探検に大きな影響を与え、多くの後続の探検家たちがナンセンの方法を学び取り入れることになりました。

ナンセンのフラム号遠征は、その革新性と科学的意義から、北極探検史に名を刻むこととなったのです。

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