ナンド・パラード

ナンド・パラード：アンデス山脈の奇跡の生還者

ナンド・パラード（Fernando Seler "Nando" Parrado Dolgay, 1949年12月9日 - ）は、ウルグアイ出身のノンフィクション作家、レーシングドライバー、そしてテレビ番組制作者として知られています。しかし、彼が最もよく知られているのは、1972年のウルグアイ空軍機571便遭難事故における16人の生存者の1人であり、その救出に重要な役割を果たしたことです。

生い立ちと事故

パラードは、モンテビデオで生まれ育ち、エステラ・マリス学園を卒業しました。彼は、同校の卒業生が結成したオールド・クリスチャンズ・ラグビーチームの一員であり、敬虔なクリスチャンでした。1972年10月13日、大学生だったパラードは、サンティアゴで開催されるラグビー国際大会に参加するため、チームメイトや家族とともにウルグアイ空軍機571便に搭乗しました。しかし、チリ航空管制の誤誘導により、アンデス山脈のアルゼンチン領内に墜落してしまいます。

生存への闘いと救出

墜落後、生存者たちは一致団結し、生き残るためにあらゆる努力をしました。食料が尽きた彼らは、事故で亡くなった犠牲者の人肉を食べるという、極限状態での決断を迫られました。しかし、救助はなかなか来ず、ラジオ放送で救助活動が打ち切られたことを知ったパラードは、ロベルト・カネッサとともに自力での下山を決意します。機体の残骸から作った粗末な装備を使い、9日間かけて危険な道程を歩き続け、チリ領のアンデス山脈麓にたどり着き、救助を呼びました。このパラードの行動が、残る生存者たちの救出に決定的な役割を果たしました。

事故後の人生

奇跡的な生還を果たしたパラードは、ウルグアイの英雄として迎えられましたが、同時に、母親と妹、そして友人パンチート・アバルを失った悲しみと、生活の大きな変化に苦しみました。彼は一時、享楽的な生活を送ることもありましたが、やがてパンチートの喪失を深く実感し、人生をよりよく生きることを考えるようになりました。事故後、パラードはレーサーになるという夢を叶えるため、イギリスのドライビングスクールに入校しました。その後、南米やヨーロッパのレースに参戦し、1977年にはイタリアのアルファロメオのレーシングチームに所属し、ヨーロッパツーリングカー選手権にも出場しました。

1978年にレーサーを引退すると、家業の金物店を継ぎ、事業を拡大しました。また、レーサーとしての経験を活かし、ウルグアイの国営テレビ局でモータースポーツ番組の制作と司会を務めました。近年では、アンデスでの経験を基に講演活動も行っています。

著書『アンデスの奇蹟』

パラードは、自らの体験をまとめた著書『アンデスの奇蹟』を2006年に出版しました。この本は、アンデス山脈からの生還体験をノンフィクションとして描き出し、多くの読者に感動を与えました。この著書は、ピエス・ポール・リードの『Alive: The Story of the Andes Survivors』を元にしつつ、パラード自身の回想を加えて書かれています。

関連作品と影響

アンデス山脈での遭難と生還のドラマは、映画や書籍など様々な形で映像化、書籍化されています。パラード自身も、これらの作品に積極的に関わっています。特に1993年の映画『生きてこそ』では、テクニカル・アドバイザーとして制作に携わっています。パラードの経験は、多くの人々に勇気と希望を与え続けています。

パラードは、過酷な状況下での人間の強さ、そして生きる意味を体現する人物として、今日でも多くの人々に感銘を与えています。

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