ナ・デネ語族

ナ・デネ語族：アメリカ大陸北西部の言語群

ナ・デネ語族は、北アメリカ大陸北西部に広がるアメリカインディアン諸語の語族です。その分布域は、アラスカとカナダの広大な地域から、アメリカ合衆国太平洋岸北部、そして南西部へと広がり、地理的に離れた地域で話されています。

最も話者数の多い言語は、アメリカ合衆国南西部で話されているナバホ語です。ナバホ語は、ナ・デネ語族の中でも特に広く知られ、その話者数は他の言語を大きく凌駕しています。

ナ・デネ語族の分類

ナ・デネ語族は、いくつかの主要なグループに分類されます。主なグループとして以下が挙げられます。

トリンギット語: アラスカとカナダ西部で話されています。話者数は減少傾向にあり、言語の存続が危ぶまれています。
アサバスカ・イヤック諸語: このグループには、イヤック語とアサバスカ諸語が含まれます。
イヤック語: 残念ながら、2008年に最後の話者であるマリー・スミス・ジョーンズさんが亡くなったため、現在話者は存在しません。アラスカで話されていました。
アサバスカ諸語: アサバスカ諸語はさらに北部アサバスカ諸語、太平洋岸アサバスカ諸語、南部アサバスカ諸語に分類されます。
北部アサバスカ諸語: アラスカとカナダ西部で話され、ドグリブ語、チペワイアン語、スレイビー語などが含まれます。
太平洋岸アサバスカ諸語: オレゴン州とカリフォルニア州で話され、フーパ語などが含まれます。
* 南部アサバスカ諸語（アパッチ諸語）: アリゾナ州、ニューメキシコ州などのアメリカ合衆国南西部で話され、ナバホ語、サンカルロス・アパッチ語などが含まれます。

ナ・デネ語族の系統関係

ナ・デネ語族の系統関係については、長年議論が続けられてきました。かつては、シベリア先住民のエニセイ語族（ケット語など）や、ヒマラヤ西側のブルシャスキー語との類似性が指摘され、同系統とする説もありました。しかし、これらの説は広く言語学界で受け入れられるには至りませんでした。

しかし、2008年にエドワード・ヴァイダによる画期的な研究が発表されました。この研究では、動詞形態論や音韻論の厳密な比較に基づき、エニセイ語族とナ・デネ語族が同系統であるという結論が導き出されました。この研究は、多くの言語学者から有力な仮説として受け入れられており、これら2つの語族をまとめて「デネ・エニセイ語族」と呼ぶ提案もなされています。

一方で、ナ・デネ語族とシナ・チベット語族との近縁性を主張する見解もあります。

なお、太平洋沿岸のハイダ語は、かつてナ・デネ語族に分類されていましたが、現在は孤立語と考えられています。

まとめ

ナ・デネ語族は、地理的にも言語学的にも多様性に富んだ言語群です。近年、エニセイ語族との意外な系統関係が明らかになり、言語系統分類の新たな地平を切り開いています。今後の研究により、さらに多くの知見が得られることが期待されます。

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