ナースホルン

ナースホルン（ホルニッセ）

ナースホルン（独：Nashorn）は、その初期型であるホルニッセ（独：Hornisse）と共に、第二次世界大戦中にナチス・ドイツが開発した対戦車自走砲です。ナースホルンはサイ、ホルニッセはスズメバチを意味し、制式番号はSd.Kfz.164として知られています。

開発の背景

1941年、ドイツ陸軍はバルバロッサ作戦において、ソ連のT-34やKV-1といった重装甲戦車に遭遇し、これらを撃破できる対戦車自走砲の必要性を痛感しました。当初、III号戦車とIV号戦車の車台を統合したIII/IV号火砲搭載車輌が開発され、15cm榴弾砲を搭載したフンメルが誕生しました。しかし、ヒトラーは、当時開発中であった新型対戦車砲・8.8cm PaK 43の搭載を指示し、対戦車自走砲の開発が開始されました。

ホルニッセの開発

実際には、同じ砲身を用いる8.8cm PaK 43/41をベースにしたPaK 43/1が搭載され、1943年2月に試作車が完成しました。同年5月には100輌の生産が命じられ、当初は「8.8cm Pak43 (L/71) auf Fahrgestell Panzerkampfwagen III/IV (Sf)」または「8.8cm Pak43 (L/71) auf Geschützwagen III/IV」という制式名称が与えられましたが、一般的には対戦車自走砲ホルニッセとして知られるようになりました。

PaK 43/1の性能

PaK 43/1は、タングステンカーバイドを弾芯とした硬芯徹甲弾 Pzgr. 40/43 を使用した場合、1,000m先から30度の侵入角で190mmの装甲を貫徹する能力を持っていました。この比類ない性能により、敵の射程外から攻撃を行う、アウトレンジ攻撃を可能にしました。

車体構造

自走砲専用の車台は、戦車型よりも全長が長く、エンジンは後部から中央部に移動していました。ただし、重量制限のため装甲は薄く、戦闘室周りの装甲板はわずか10mmでした。乗員はほとんど無防備な状態でした。

ナースホルンへの改名

1944年2月27日、ホルニッセは総統命令によりナースホルンと改名されました。この頃、砲身を固定するトラベリング・クランプが車内からワイヤーで解除できる型に変更されるなどの仕様変更が加えられました。また、最後期型では、操縦手席と無線手席が繋がった形状の前面装甲になったと推測されますが、写真での確認はされていません。

生産と配備

ホルニッセ/ナースホルンは、1943年に345輌、1944年に133輌、1945年に16輌、計494輌が生産されました。その後、より防御力の高いIV号駆逐戦車やヤークトパンターなどの対戦車装甲車両が登場し、また同じシャーシを用いるフンメルの生産が優先されたため、月産45輌を目指した生産計画は20輌に縮小されました。

実戦投入

ホルニッセ/ナースホルンは、重戦車駆逐大隊に配備され、クルスクの戦いが初陣となりました。ナースホルンは、ロシアの開けた平野でその性能を遺憾なく発揮し、遠距離からの精密射撃で敵戦車を撃破しました。機械的信頼性の高い光学照準器と、低伸する弾道特性を持つ火砲により、敵の有効射程外から一方的に攻撃することが可能でした。PaK 43/KwK 43で武装した他の戦車と同様に、ナースホルンは連合軍のあらゆる戦車の装甲を貫徹する能力を持っていました。配備された各部隊は、終戦まで全ての前線で運用されました。

現存車両

2017年8月現在、ナースホルンは2両が現存しています。

性能諸元

製造：ドイチェ・アイゼンヴェルケ社
乗員：4-5名
戦闘重量：24t
全長（砲含む）：8.44m
全長（砲なし）：7.26m
全幅：2.95m（東部戦線用履帯装備時：3.176m）
全高：2.65m
地上高：0.4m
速度：42km/h（整地）
航続距離：235km（整地）
エンジン：マイバッハ HL 120 TRM Ausf. A
出力：300馬力（3,000回転時）
主砲：8.8cm PaK 43/1
口径：88mm 71口径
弾薬搭載量：24-40発
副武装：7.92mm MG-34またはMG-42機関銃

登場作品

(記載なし)

外部リンク

Achtung Panzer! (英語)
WWII Vehicles (英語)
* Hornisse manual (英語)

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